エッジコンピューティング

エッジコンピューティングについて解説します。

エッジコンピューティングの仕組み

エッジサーバーとは

エッジコンピューティングは分散コンピューティングの概念で、データ収集元となるIoTや各種端末デバイスの近くにエッジサーバーを置くことで、リアルタイムにデータ処理、分析を行う仕組みです。

工場やビルに設置されたカメラ、センサーからは常に大量のデータがサーバーに送られてきます。そのデータをクラウドサーバーで、データの送信、処理、結果の受信まで行うと、数ミリ秒単位で遅延が発生します。エッジサーバーはこのような遅延を防ぐために、データ収集元となるデバイスとの距離を極力近くして、リアルタイムにデータを処理する役割を果たします。

エッジコンピューティングとは

エッジコンピューティングのメリット

前項にあるようにエッジコンピューティングの最大のメリットはデータ処理のリアルタイム性になりますが、それ以外にもエッジコンピューティングはマシンリソースの最適化、通信コストの削減、情報保護という3つのメリットを持ちます。

エッジサーバーは自身でデータ処理を行うだけでなく、末端デバイスとクラウドサーバーとのハブになる役割を持ちます。これによりクラウドサーバーで中央集権的にデータ処理を行っていた時と比べて、エッジサーバーがその負荷を分散するため、クラウドサーバーが必要とするマシンリソースを抑えることができます。

同様に通信コストについても、末端デバイスとエッジサーバーが近距離にあること、クラウドサーバーに送信されるデータをエッジサーバーが前処理してサーバー間の通信量が削減されること、この2つの観点から通信コストの最適化が行われます。

最後に情報保護についてですが、末端デバイスで得られる情報にはカメラによる映像を代表例として、不特定多数の情報が含まれます。このような情報についてエッジサーバーで処理を行うことで、クラウド上にデータを保存する必要がなくなり、情報漏洩のリスクを軽減させることができます。

エッジコンピューティングの活用事例

IoTでの活用

2010年頃を境にスマートフォン、スマートスピーカー、スマートウォッチ、スマートホームを始めとして、インターネットに常時接続可能な電子機器が広く普及しました。IoTにはデータ取得のみを行うセンサーとしての役割、エッジサーバーとしてデータ処理、送信の役割、その両方の役割を持つものなど、様々な種類のものが登場しています。

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5Gとの関わり

2020年から日本でも5Gの運用が始まります。その最大の特徴は4Gの約20倍の速度、10倍の同時接続可能数、10分の1の遅延速度になります。これはtoC向けのサービスでは映像コンテンツのダウンロード速度向上がよく取り上げられますが、5Gがそれ以上に力を発揮する分野が産業利用になります。

自動車のブレーキや医療用手術ロボットなどの分野では数ミリ秒のズレが大きな事故につながります。エッジコンピューティングはこのような遅延を避けるために、末端デバイスとの距離を可能な限り近づけることでレイテンシ向上(遅延速度の低下)を実現しましたが、5Gはその流れをさらに加速させます。

また5Gの技術そのもの自体の仕組みもエッジコンピューティングを土台としています。5G普及の課題として基地局設置の課題がありますが、これは5Gが4Gに比べて電波の届く距離が限られているためです。そしてこの基地局が5Gの通信要件を実現するためのエッジサーバーの役割を果たしています。

AI、機械学習への応用

AIや機械学習はその精度向上において、データ量の多さと質が最も重要な要素となります。それに対してエッジコンピューティングは、エッジサーバーによるデータのフィルタリングと送信、末端デバイスでの大量のデータ取得といったインプットの役割、アルゴリズムの結果を利用者にサービスとして提供するアウトプットの役割、その両面を担います。

代表的な例として、スマートスピーカーは音声データを収集したものに対して、言語処理のアルゴリズムがデータ処理を行い、利用者の呼びかけに対して様々な返答を行います。またスマートスピーカーを通じて集積されたデータは、音声アルゴリズムそのものに対してフィードバックの機能を果たします。

単純なデバイス制御であれば機械学習を用いた複雑なデータ処理は不要ですが、画像認識を用いた自動運転技術や遠隔診療など、複雑性が求められる領域においては高度なアルゴリズムが必要になり、エッジコンピューティングと機械学習の両方の技術を統合して一つのサービスが提供されることになります。

クラウドAIとエッジAI

前項で説明したようにエッジコンピューティングとAIには密接な関わりがあります。その中でAIによるデータ処理について、クラウドサーバーで行うケースはクラウドAI、エッジサーバーで行うケースはエッジAIと定義されています。エッジAIはリアルタイム性が求められる領域、例えば自動運転の事故予測や工場での異常値検出でその活用が徐々に進んでいます。

しかし現在のエッジサーバーでは大量のデータを学習するだけのマシンリソースをコスト面で十分に確保できないこともあり、エッジAIとクラウドAIを組み合わせながら一つのサービスを提供するケースが主流となっています。

エッジコンピューティングのセキュリティ事情

通信規格と暗号化

エッジコンピューティングではエッジサーバーとクラウドサーバーの通信にHTTP、エッジサーバーと末端デバイスの通信にBluetoothが使われます。そのためスニッフィング(中間者攻撃)対策として、データ送信の際に暗号化技術を使うことが推奨されています。

一方で暗号化はデータ処理において計算量を増加させてしまい、リアルタイム性を求められるような領域ではどうしてもセキュリティ要件とサービス要件でコンフリクトが発生します。秘匿計算と呼ばれる、データを暗号化したまま機械学習を行う手法が実用化に向けて研究されているものの、実用化にはまだ技術的課題が多く残ります。

ゼロトラストネットワーク

エッジコンピューティングの代表的なセキュリティ対策として、暗号化の他に、ネットワークへのファイアウォール設置があげられます。しかしそれも攻撃者が一度正規のアカウントを手に入れて成り済ましに成功してしまうと、ネットワーク内で自由に情報にアクセスすることを許してしまいます。

それに対して、ここ数年「ゼロトラストネットワーク」と呼ばれる新たな手法が注目を集めています。ゼロトラストネットワークではネットワーク内においても、領域を細かく区切り、それらに対してセキュリティレベルを設けて、同一の端末であってもセキュリティレベルが変わる毎に再認証を行います。

まとめ

エッジコンピューティングは人々の生活や産業を始めとして、今後さらなる応用が期待されています。しかしそこには前述したようなサイバー攻撃のリスクであったり、複雑化したネットワークの運用、管理など、技術的課題も多く伴います。システムの運用担当者は利用するソフトウェア・ハードウェアその両面の特性やリスクを考慮しつつ、どのようにしてセキュリティリスクやコストを抑えながら、効率的なサービス運用を実現するのか、その設計力が強く求められます。