ウェビナーレポート:中国最新リテール事情〜コロナの前後で何が変わったのか?

7月30日にソフトバンク、SBクラウドの共催ウェビナー「中国最新リテール事情〜コロナの前後で何が変わったのか?」が開催され、中国アジアITジャーナリスト 山谷剛史氏、プラスチャイナ株式会社CEO 中島嘉一氏、アリババクラウド・ジャパンサービス株式会社 大和田健人氏が登壇し、最新の中国事情を解説しました。

本記事では、オンラインで行われた各セッションの内容を報告します。

 

山谷剛史氏が語る「中国での新型コロナとインターネット」

 

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2002年より中国やアジア地域のIT事情の執筆を続けている山谷氏は、新型コロナウイルス発生時の中国の状況と、その対応から振り返りました。

「コロナが発生・感染拡大して非常事態になった中国では多くの小区(マンション)が封鎖され、住民は外に出られませんでした。ちなみに、中国の都市部はほぼマンションで、一戸建てはほぼありません。住民は外に出られないから食糧も買えません。そんな時に活躍したのが、アリババのテクノロジーでした。

ECサイトの淘宝や天猫、最短30分以内で配達してくれるオンラインスーパーマーケットの盒馬鮮生(フーマー)、弁当などを配達するフードデリバリーの餓了麼(ウーラマ、Ele.me)などにより、マンション入り口に日々食糧が運ばれたのです」

淘宝や盒馬鮮生、餓了麼などは以前からあるサービスで、コロナによりニーズが一気に拡大した形だが、その流れとは別に“新しい動き”も見られたという。

「インターネット生配信で紹介しながら商品を販売するライブ・コマースも2016年頃から既に人気が出ていましたが、今回のコロナでは車や不動産など、これまでライブ・コマースでは売っていなかった業界も“店にお客さんが誰も来ないから”と売りはじめました。また、農家が農作物をライブ・コマースで直接お客さんに販売する、というものも流行りました」。
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さらに、山谷氏はもう一点、今回の中国の動きで注目すべきポイントとして「中国式ワーケーション(ワーク&コラボレーション)」を挙げました。

「中国でマスクが不足しはじめたときに大手家電メーカーのハイアールは、同社が開発したクラウドにより工場の生産体制を最適化するプラットフォームである“COSMOPlat(コスモプラット)”を使い、中国全土で必要な数を生産するという体制を整えました。
その後は、この“最適化”の考え方から、マスクだけでなく中国の企業が再稼働するためのサービスをつくろうと、金融やホテルなど、異業種が連携した1つのソリューションをつくろうとしています。これはまさに中国式ワーケーションと言えると思います」。

たとえば、ホテルの中にオフィスをつくり、そこでスタッフの居住から体調管理や業務のオンライントレーニングなど、さまざまなサービスを提供することで企業の再稼働を促進していく流れが生まれているという。
 

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「最後になりますが、日本は中国から学んでいく必要があると感じています。日本はGAFA完全依存ではなく、楽天をはじめ自国サービスをもつ数少ない国の1つであり、それは中国と共通する点です。そのうえで現在は中国のほうが先行している事実があります。

また、今後はAliExpressのライブ・コマースサービスのように、日本市場、日本人向けに配信するサービスが出てきています。日本企業もそれを活用する機会が増えると思うので、中国から学ぶところはたくさんあると思います」

 

中島嘉一氏が語る「ポストコロナ時代のKOLビジネスモデル」

続いて登壇したのは、大手家電メーカーの中国法人で10年以上生活した経験をもち、現在は「日中ビジネス拡大に貢献」をミッションに掲げたプラスチャイナ株式会社のファウンダー・CEOとして活動している中島嘉一氏。

 

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講義テーマ「ポストコロナ時代のKOLビジネスモデル」にあるKOLとは「Key Opinion Leader」の略で、日本のインフルエンサーと近い存在。

「現在、中国ではKOLのライブ・コマースに注目が集まっています。ちなみに、日本では最近、サザンオールスターズがオンラインコンサートを行ったところ、チケットで6億円以上を売り上げました。これはじつにリアルコンサート29回分に匹敵するものです。
多くの企業がコロナによる打撃を受けるなかでオンラインコンサートはコロナの数少ない功績と言ってよいと思いますが、中国の小売りでもこれと同じことが起きているんです」。

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それがKOLによるライブ・コマースだと中島氏。「そもそも中国は“不信感の国”なので派手な広告は信用されません。信用するのは知り合いの声だけで、そこにKOLがピタリとはまった感じですね。また、中国語は漢字のみで全て読むのが面倒なので、動画を見るほうが楽という背景もあります。2018年頃から一気に動画の時代へと変わり、KOLがライブ・コマースをするようになり大流行しています」。

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KOLの中でも動画を主戦場にする存在は「網紅(ワン・ホン/網はネット、紅はスターを指す)」と呼ばれるようになっているという。

「代表的なワン・ホンでは、2018年に年間412億円を売り上げた薇娅(ウェイヤー)、“口紅王子”と呼ばれ300秒で15,000個の口紅を売った厉嘉琪(リー・ジャーチー)などが有名です。
ライブ・コマースはデパートの実演販売のようなところがあり、ファンじゃなくても盛り上がっているからちょっと見てみようかとなり、さらにカウントダウンなどの煽りもどんどん入り、後でキャンセルできることもあって、興奮状態で思わず買ってしまうんです」。

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現在は、KOLやワン・ホンだけでなく、企業経営者などが出演するライブ・コマースも人気が出てきていると中島氏。

「じつはワン・ホンを起用してたくさん売っても、終了後にキャンセルの嵐が起こるなど、さまざまなトラブルが起こっている現実があります。でも、それは当然で、サザンがオンラインコンサートをやって売れるのはサザンに人気があるからで、人気のないバンドがいくらオンラインで何かをやろうとしても売れませんよね。
だから、どんな商品でもワン・ホンを使ってとにかく売ろうとするよりも、商品にこだわりや思い入れのある企業の社長や商品開発者が自ら説明したところ売れるというケースもあります。
それに社内で出演者も出せば、PCDAも回すことができるというメリットもあります。実際に、中国の旅行会社の社長が自ら観光地を巡って紹介するライブ・コマースでは5回で9億円ぐらいの売上を出したケースもあります。じつは僕自身もやっていて、中国からビジネス開設の相談が毎日のように来ています」

コロナにより多くの企業が売り上げを落としている状況をふまえ、中島氏は最後に「ライブ・コマースに社員が出演するのであればワン・ホンに大金を払わなくても簡単にはじめることができます。ウィズコロナの時代は免疫を上げるためにも楽しく仕事しましょう」とまとめました。

 

「Alibaba Cloudが切り開くアフターコロナのビジネス最前線」

最後に登壇したのは、アリババクラウド・ジャパンサービス株式会社シニアリサーチャーの大和田健人氏。

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「Alibaba Cloudは、24時間で2,684億元(約4.16兆円)の売り上げを記録した世界最大のオンラインショッピングイベント“W11(ダブルイベント)”はもちろんのこと、コマース、エンターテインメント、ロジスティクス、デジタルマーケティングなど、アリババが提供する全てのサービスのインフラを支えています。クラウドベンダーとしては中国でトップシェアであると同時に、アジアパシフィックで1位、世界3位のシェアを誇ります。日本でも、資生堂をはじめとしたグローバルに展開する大手企業に多数導入いただいております」。

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大和田氏は中国ではさまざまな分野でAlibaba Cloudのテクノロジーが導入・活用されていることを説明しました。

「医療分野ではAIをコアとして人間の不得意な分野を支援しています。たとえば、CT画像の分析です。全ての医師がコロナの兆候やパターンを見てわかるわけではないので、AIを使った診断のアルゴリズムを開発し、世界中に提供しています。
また、感染予測もビッグデータとAIを活用して、98%の精度で予測することが可能になっています。アリババは医療分野に注力してきたわけではありませんが、これまでに使っていた技術を医療にも活用するとともに、今後はしっかりと成長させていこうと考えています」。

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その他にも「非接触」をキーワードに、アリババのテクノロジーがさまざまな分野で注目を集めていると解説しました。

「顔認証決済の“ALIPAY”、食事はロボットが部屋まで運ぶなど無人で運営されるアリババの未来ホテル“FlyZoo”。さらに、エンタメも非接触で進化していて、上海ファッションウィークでは史上初のグリーンバックのバーチャルキャットウォークを使ったショーが実施されました。
このショーの面白いところは、出演時に売り上げが良かったモデルをもう一度出そうなど、これまでクラウド上でやっていたことがリアルでされるようになった点です」。

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非接触の注目度が上がる一方で、大和田氏は「非接触はキーワードですが、単に非接触にリプレースするのではなく、非接触ならではの価値が生み出されてきています。上流から下流までを包括するエコシステムも構築されているため、レガシーなものは何かしらに置き換えられるタイミングが来ているのかもしれません。
この流れはきっと日本にもやってきます。弊社は日本の企業様のDX推進をお手伝いするため、SBクラウドとともにさまざまな製品・ソリューションをご提供します」と締めくくりました。

 

イベントのお知らせ

9月25日に中国のAI・IoTをテーマにしたセミナーを開催します。


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講師プロフィール

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山谷 剛史中国アジアITジャーナリスト)

中国アジアITジャーナリスト。2002年より中国昆明を拠点に中国やアジアのIT情報を執筆。「文春オンライン」や「ASCII.jp」など連載多数。SBクラウドのWebサイトにて「中国から学ぶITトレンド」を連載中。

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中島 嘉一プラスチャイナ株式会社 CEO)

上海で起業し、現プラスチャイナ株式会社を設立。中国向けWebビジネスコンサルティングに従事。中国ビジネスに関するセミナーやイベントに登壇するほか、Twitterで4,500名、noteで15,000名、中国SNSでも20,000名以上のフォロワーを擁し、中国ビジネスに関する情報を発信中。

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大和田 健人アリババクラウド シニアリサーチャー

ゲームプログラマーとして某ゲーム機メーカーに入社するものの、中国にて10年間マーケティング活動に従事。その後、インドネシアで起業。最近は日本と中国と東南アジアを繋ぐため、企業を支援している。 2019年末より、アリババクラウドに入社。