IoTやQRコードを活用した「ゴミ収集」のスマート化事例(山谷剛史の中国から学ぶITトレンド)

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中国都市部にあるスマートゴミステーション

去年から上海を皮切りに、ごみの分別が中国各地で続々とスタートしました。それまでは雑にゴミを捨てればよかったものが、「生ゴミ」「リサイクルゴミ」「有害ゴミ」「その他のゴミ」の4つに分類されるようになりました。これまでは都市であればマンションの団地内で共有のゴミ箱にまとめてゴミを出していたのですが、これを4種類にわけなくてはいけなくなりました。住民としてはなかなか面倒です。

また、ゴミの分別に合わせてゴミ分別を学ぶアプリやカードゲームがすぐに登場しました。たとえばりんごや電池などが描かれた絵が出され、そこに描かれたものはどのゴミ箱に捨てるのかをクイズ形式で答えるものです。

それから道路上や住宅地にはまだまだ少ないようですが、スマートな「IoTゴミステーション」が設置され始めました。清掃ソリューションを提供する龍吉順という企業のゴミステーションは、分別のための4つのゴミ捨て口それぞれに秤(はかり)と温度計を設置し、量が多くなると自動で業者に連絡され、業者がゴミの回収にくるという機能が備えられています。またゴミ箱内の温度に異常があったときも、自動で連絡されます。

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タッチパネル付きゴミ回収車で各家庭のゴミ分別をワンタッチで操作

ゴミ収集をスマート化する一例として、IoTゴミ箱だけでなく清掃業者にもスマート設備を導入した、浙江省の嘉興市海寧市李家村の導入例を紹介します。一戸建てが並ぶ農村部で、ここで各家庭から分別されたゴミを回収するのですが、スマート回収車を走らせてそれぞれの家の前で停止した後、以下のようなプロセスでゴミを回収します。

 

  1. 清掃スタッフは民家の入口にあるQRコードをスキャンし、どの家のゴミを回収するかを登録
  2. 清掃スタッフはゴミ箱を見て出したゴミをチェックして、ゴミの分類に問題があるかないかをタップ
  3. 清掃員がゴミ箱の中の写真をさっと撮り、ゴミ箱の中を撮った写真はクラウドに送りビッグデータ化
  4. 役所で各家庭の分別状況や各ゴミの収集状況を可視化
  5. 分別ができていない場合はその家の住民にメッセージを自動送信、分別ができていた場合は商品に交換できるポイントを付与

 

さらに中国ならではの事情として、正しくゴミを分別することで、「文明家庭(モラルある家庭)」と評され、共産党員の評価付けでプラス評価される報酬もあるそうです。

直接あらゆるゴミを自動分別するスマートなゴミ箱はなく作業員が人力で確認するのですが、その作業についても「誰が出したか」をQRコードで、「正しく分別して出したか」をゴミ目視の後でワンタップ操作すれば、素早く分別状況をクラウドに送れるのです。

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杭州でみかけたゴミ袋販売機とゴミ分別景品交換機(宗盛智能)

李家村の例では、一戸建てが並ぶ農村ゆえに家庭ごとに回収するゴミ箱が用意され、スマート化が実現できました。一方都市部では集合住宅ばかりで、各家庭は敷地内の一カ所の分別ごみ置き場にゴミを持っていきます。この場合、どのように各家庭が正しくゴミを分別して捨てているかチェックするのでしょうか。これにはいくつかの企業が、以下のようなシステムを出しています。間違った分別をされるとマークされる反面、正しく分別するとポイントが貯まるものが多いです。

・袋の自動販売機をQRコードで買うことにより、誰がどのゴミ袋で出したかがわかるシステム
・家庭ごとに異なるQRコードが書かれたシールが配られ、ゴミ袋にシールを貼ることでどの家庭でゴミを出したかわかるシステム
・スマートゴミステーションにQRコードリーダーやICカードがあり、利用者がQRコードやICカードを出すことで、スマートゴミステーションが開きゴミが捨てられるというシステム

中国は監視社会によって、人々の行動を改善しています。ゴミ出しまでも丸裸にされ、アメとムチによる管理が行われるため、日本でそれがそのまま採用される可能性は低いでしょう。しかし、ヒントになる部分はあると思います。いい部分だけうまく日本でとり入れて、スマートな日本向けシステムとしてアレンジして活用できればと考えずにはいられません。

 

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筆者プロフィール

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山谷 剛史(やまや たけし)

1976年東京生まれ。東京池袋近辺、福岡市、中国雲南省昆明育ち。フリーランスライター。
2002年より一貫して中国やアジア各国のITやトレンドについて執筆。中国IT業界記事、中国流行記事、中国製品レビュー記事を主に執筆。

主な著書に『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書)』『ゼロからはじめる 海外旅行でスマホ活用 スマートガイド』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち (ソフトバンク新書)』など

公式プロフィール:https://about.me/yamayat
Twitter:https://twitter.com/YamayaT