中小企業にとってWindows365は最適解なのか? ~メリット・デメリットを解説(技術コラム)

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2021年8月現在、デルタ株への変異によりコロナ禍は継続しています。引き続き日本政府は営業時間の短縮やテレワークの実施継続を求めていますが、テレワーク実施率は都内勤務者さえ約4割に留まり、全国では約2割に留まっています。都内の実施率が高いのは感染率に加えて、大企業の本社が多いことが理由とされます。

テレワーク市場においても、大企業では既にテレワークは実施中となっている一方で、中堅・中小企業においては、依然として費用対効果について検討中あるいは一度断念したという企業が多く存在することを感じています。

一方で、前回のコラムで従量課金型の仮想デスクトップサービス「Cloud Remote Desktop」をご紹介しましたが、従量課金により低価格で導入できる仮想デスクトップについては、従来コスト面でテレワークが難しいと言われていた中小企業にもご採用いただいています。

従量課金であれば月額固定料金のサービスの半額以下となり、FAT PC並のコストを実現しています。コスト負担増がなければ、追加投資が難しい場合でもPCの増設やリプレースのタイミングで、段階的な移行が可能になるためです。

こうした中小企業におけるテレワークの需要が注目される中、Microsoft社も新たな仮想デスクトップサービスであるWindows 365のサービスを開始しました。本日のコラムでは、Windows 365についてメリットや制約される点、他サービスとの比較などについてご紹介したいと思います。


〈目次〉

 

Windows 365が中小企業のテレワークを普及させるか


 

Microsoft社の新たな仮想デスクトップサービスであるWindows 365は、当初話題があった個人向けはなく、法人契約を前提とする大企業向けのEnterpriseと中小企業向けのBusinessがラインナップされました。

Windows 365では、クラウド上にユーザ一人一人が占有するPCを持つイメージで、あるデバイスで作業をおこなった後、他のデバイスで作業が再開できるハイブリッドな働き方を実現するCloud PCのコンセプトを持っています。具体的には、Windows 365は1vs1接続のシングルセッション(VDI方式)のみで提供されます。

従来Microsoftが展開していたAzure Virtual Desktop(以後AVD)はWindows10を占有するシングルセッションは高額に設定されており、1台のWindows10を共有して1つのOSに複数人が同時にログオンして使うマルチセッション方式であれば、実質の1人あたりの単価は安価であるという説明をしていました。シングルセッションでは高額、マルチセッションでは互換性に懸念がある、また管理機能として仮想デスクトップに特化した機能が不足している、あるいはクラウドに関する知識が必要であり、Microsoft社純正サービスではあるが、導入において大企業以外には敷居が高いという評判でした。そのため、シングルセッションに絞った上で、仮想デスクトップに特化したシンプルな管理機能の提供や価格の見直しをおこなっています。

 

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ユーザからの使用感としては、Windows 365では、Windows10で稼働する仮想デスクトップには、Windows標準のリモートデスクトップ接続、ストアアプリ、およびブラウザからの接続サポートし、LinuxやMacOS等の非Windowsデバイスからの接続もアピールしています。ブラウザからの接続ではマイクやクリップボードのリダイレクト機能にも対応します。

現状、印刷はPDF出力での連携、またWebカメラは対応していないようです。ストアアプリはWindows 365の登場前から存在しますが、機能強化は進んでおらず、フルに機能を利用するためには、古くから親しまれているWindows標準のリモートデスクトップ接続が向いているようです。


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デスクトップ環境としては、Windows10に加え、将来はWindows11にも対応を予定しています。

WordやExcel等のMicrosoft 365のローカルアプリケーションもあらかじめインストールされていますが、ライセンスは別途必要になります。現時点では、デスクトップ環境は英語版での提供で、日本語環境への変更作業をおこなう必要があります。

注目の価格は最も人気が集まるだろう2vCPUではメモリ4GB・ディスク64GBで月額固定の3,810円/月、メモリ8GB・ディスク128GBで5,570円/月と設定されました。月額としてはAVD比較としては、意欲的な価格設定で、月額のわかりやすさを訴求しています。

ただ、8万円のFAT PCを3年使うならば月額2,222円/月とこれまでも説明してきましたが、Microsoft 365はFAT PC比較で大幅コスト増になる価格となっています。中小企業のテレワークの起爆剤になるかというと、価格を見直してもFAT PCよりも高額という印象を払拭することができていません。

この価格設定は、ライバルであるAWSのWorkspaces等のサービスに対抗する価格と想定され、本物のWindows10が利用できるメリットがある上で、価格は若干安価に設定したのではないかと想像されます。

 

Windows 365 Businessの制約


 

Windows 365 Businessでは、Azure内のネットワークへの接続、Active Directoryによる管理、マスターイメージやセキュリティ設定の管理が省略されており、国内企業の一般的なセキュリティポリシーに照らすと中堅以上の企業は利用数が300名以下でも高機能なWindows 365 Enterprise選ばざるを得ず、さらに追加でMicrosoft 365 EnterpriseまたはWindows Enterpriseのライセンスを契約することとなり、結果割高なMicrosoft付加サービスを選択せざるを得ません。

Windows 365 Businessは、名前こそビジネスで、実際に法人契約が前提ですが、環境としてはインターネットに直接公開されているVirtual Private Serverのような仕様であり、中小企業にとっても個別にVPN接続や仮想デスクトップのセキュリティを検討する必要がある等課題がありそうです。 

 

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〈Virtual Private Cloud非対応 仮想デスクトップ〉
 

国内企業の多くは中小企業であっても社内ネットワーク、すなわちオンプレミスへ閉域接続のクラウドに資産があり、このようなネットワーク構成ではゲートウェイセキュリティやVPN接続、管理系サーバの追加が可能なVirtual Private Cloud構成が求められます。

 

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〈Virtual Private Cloud対応 仮想デスクトップ〉

 

ベターサービスだが、中小企業にとっては依然として導入ハードルが高い


 

Windows 365は月額固定価格によるわかりやすさをアピールしていますが、中小企業にとっては従量課金でも低価格なサービスが切望されているのではないかと思います。また、スペックアップやダウンに関しても制限があることで、繁忙期や開発フェーズでのみ8CPUや16CPUにスペックをアップするようなクラウドならではの使い方ができません。従来の外勤の業務だけではなく、ソフトウェアやクラウド開発者やグラフィックデザイナー等、すべての働き方をリモートにする上では課題になってくると想定されます。

Windows365のエディション間の違いについて下記にまとめました。あわせて弊社が展開し、従量課金で好評を頂いている「Cloud Remote Desktop」との比較を記載します。

 

  Windows 365 Business Windows 365 Enterprise Cloud Remote Desktop
OSライセンス 含む(Windows10) 別途契約が必要 含む(Windows Server 2019)
Microsoft Officeライセンス 別途Microsoft 365契約が必要 別途Microsoft 365契約が必要 別途SPLA契約が必要
Virtual Private Cloud バブリックネットワーク 対応(VNet) 対応(VPC)
アウトバウンドトラフィック 同梱(転送量超過で帯域制限あり) 無制限(従量課金) 無制限(従量課金)
ユーザActive Directory 非対応 対応 対応
マスターイメージ管理 非対応 対応 対応
デスクトップ言語 英語(手動設定で変更可能) 英語(手動設定で変更可能) 日本語、英語、中国語 等
ユーザ数制限 最大300ユーザ 無制限 無制限
スペック変更 不可 スペックアップは可能 可能(スペックアップ、ダウン共に可能)
従量課金 非対応 非対応 対応
従量課金費用(月160時間想定算出) 非対応 非対応 1,800円/月
月額固定費用 2vCPU 4GB 128GB
4,350円/月
※特典で3,810円/月
2vCPU 4GB 128GB
4,350円/月
※特典で3,810円/月
2vCPU 4GB 100GB
3,900円/月
その他の必須有償契約 なし Azure AD
エンドポイント マネージャー または包含するMicrosoft 365契約
なし

 

※Cloud Remote Desktopの価格は1$ 110円計算の概算
※Windows 10 Pro をデバイスで使用している場合に、Windowsハイブリッド特典としてWindows 365サブスクリプションが割引
 

Windows 365は、AVDとの比較ではシングルセッション利用前提で価格面でベターであり、AVDより簡易なUIで管理できることから、Microsoft純正サービスやWindows10が必須である企業にとってはよりよい選択肢が提供されたと思います。ただ、こうした純正品を求めるのは比較的予算に余裕がある大企業だけではないかと思います。

中小企業にとってはコスト面で依然として導入ハードルが高いことは確かですが、コスト理由で導入を断念していた、あるいは、より高額なサービスを利用していた企業には、あらためてコストについて見直しが到来したことは間違いありません。

引き続き、仮想デスクトップの各サービスには、特徴があることを理解しながら、自社の働き方やセキュリティポリシーにあったサービスを選定する必要がありそうです。

 

SBクラウドの仮想デスクトップサービス

 

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西澤 和正SBクラウド株式会社
クラウド技術統括部 技術部 部長

大手SIer現場での設計・構築経験を経て、エンタープライズや自治体向けにセキュアなプライベートクラウド基盤やワークプレース系ソリューションを提供してきた。SBクラウドでは、Alibaba Cloudを活用したセキュリティソリューションや低価格を実現する仮想デスクトップサービスの企画開発を通し、標準化・自動化への取り組みやリーンアジャイル型ソリューション開発の実践によりマルチクラウド時代のエンジニアリングサービスのモダン化に取り組んでいる。