マイクロビジネスからグローバルECプラットフォームへ プロスペクトフィールドCEOに聞く越境EC成功の秘訣

 

プロスペクトフィールド株式会社に聞く越境EC成功の秘訣

プロスペクトフィールド株式会社(以下、プロスペクトフィールド)には、2つの顔があります。ひとつは国産デニム専門店「DENIMIO」の越境EC展開。そして、DENIMIOで培われた知見を活かした、企業向けグローバルECプラットフォーム「Lingble」の提供と事業コンサルティングです。

後者の事業は現在、日本有数のレディースファッションブランドやキッズ向けブランドの海外EC展開ほか、海外企業でも活用されており、各社とも売上は順調な伸びを示していると言います。

越境ECと言えば、さまざまな課題が指摘される分野。そんな中で、大手企業とともに成長を続けているプロスペクトフィールドとはどんな会社なのでしょうか? 同社CEO原田真帆人氏に話を聞きました。

 

まずは、プロスペクトフィールド誕生のきっかけをお聞かせください。

原田:プロスペクトフィールドは、転職を考えていた妹に「自分でできるマイクロビジネスをやればいい。自分も手伝うから」と言ったことがきっかけで誕生した会社です。

ただ、当初はどんなビジネスをするか決まっていませんでした。そんな時、デニムの世界販売を手がけているドイツの友人に「うちからデニムを仕入れて、それを日本で売ってはどうか?」と言われ、輸入販売を手がけることになったのが事業の始まりです。

以降、経験を積む中で、日本のデニムを販売する輸出ビジネスに事業転換しました。

国産デニム専門の通販サイト「DENIMIO」

国産デニム専門の通販サイト「DENIMIO」https://www.denimio.com/

 

越境ECができるサービスはいくつかありますが、自社でゼロからシステム構築をした理由はどんなものだったのでしょうか?

原田:確かに、デニムを販売するだけのECサイトを始めるなら、自社開発までする必要はありません。

しかし、「自社のデニムショップはモデルとして展開し、その先でシステムを提供して『海外に商品を出したいけれど、エンジニアはおらず、外国語が話せる人材もいない』という企業にも越境EC展開の機会を提供していきたい」と、考えるようになりました。

だから、自社での開発にこだわったわけです。

 

越境ECにはさまざまな課題があるなかで、それでも商機があると感じられたきっかけは?

プロスペクトフィールド

プロスペクトフィールドの本社にはDENIMIOの店舗も併設している。わざわざ海外から店舗に訪れる根強いファンもいるのだとか

原田:海外に目を向けると、地球の裏側にも「日本のデニムがほしい!」という人がいることは分かっていました。

ただ、たとえばどこか海外の都市にある百貨店に商社が入っていって日本のデニムを展開するとなると、おそらく大赤字になるでしょう。

半径20kmを商圏と考えると、ファストファッションの方が価格やバリエーション、場合によってはコストパフォーマンスの面で、優位性があるものです。

しかし、それにアンチテーゼを持つ人は必ずいます。

世界中に薄く広く存在するそのような人たちを集めて成り立つマーケットをつくり、彼らの期待に応えるアイテムが買える環境を作ることが私達の事業モデルであり、これなら高コストな流通の問題などを解決できると考えたのです。

もちろん、これは日本をはじめフランスやイタリア、英国でこだわりの生産方法を貫いている生産者たちにとっても販路を確保する機会になるでしょう。

インターネットの力で距離を取り除くことで、ユーザーにはいろんなオプションを提供できるし、生産者が培ってきた文化や多様さを残すことにもなると考えています。

 

インターネットは地理的な制約を超える、というわけですね。実際に越境ECの事業を進める上で難しい局面もあったのではないでしょうか?

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原田:日本国内でECをしていると想像もつかない問題がありました。たとえば、国内だけですとハッカーによるクラッキングや不正利用といったトラブルに遭うことは少ないでしょう。

これは、日本語という”複雑な言語"と、国土としては小さいけれど経済規模はそれなりにあるからこれまで越境ECの必要性に迫られなかった、という側面が関係していると思います。

しかし、そこから一歩踏み出すと、どうなるか? 

実際にプロスペクトフィールドで輸出事業を展開してすぐに直面したのは、PayPalの不正利用、多数のチャージバックでした。

実は、決済サービスの導入自体は非常に簡単です。PayPalと店舗が直接契約を結ぶとすぐに使えるほどのものです。

ただし、そこで不正利用が発生すると、PayPal側から「不正利用が多すぎるから契約を解除する」と言われてしまいます。私達が直面したのは、まさにそんな事態でした。

そこで、今度は国内の事業者が提供している越境ECのプラットフォームを利用することにしました。

 

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お陰様でそのプラットフォーム内ではダントツの売上を記録していたと聞いています。しかし、PayPalの一件があったことで、私達は若干「売れすぎていて怖い」と思うようになっていました。

そのことを相談すると、「オーソリティシステムに沿っているし、不正利用保証もあるから大丈夫!」や「なりすましによる不正利用は1〜2カ月でカード利用者が気づき通報してくるので大丈夫。不正利用の保証金額には確かに上限が設けられているけれど、これを超えることはまずないと確信しています!」と、事業者側は言っていました。

そして出店してから6カ月後のこと。高額な請求書が届きました。やはり、不正利用されていたのです。

紆余曲折を経てこの問題は解決したのですが、こうした痛い経験を通じで感じたのは、「日本で展開されている越境EC支援のサービスは、まるで学業成就のお守りみたいなもので、見た目は海外向けでも本質的にはそれに見合うことができていない」ということでした。

本当に越境ECをするためには、痛い経験を通じて、どのような防御が必要でどうやってそれを行うか、カスタマーサポートとしてどんなものが必要か、自分たちの手で見極めてクリアしていくほかありませんでした。

なかでも、日本企業が注目している中国ではアクセサビリティが低下しますし、サイトのアクセスに問題なくても決済サーバーの遅延が起きることもしばしばです。

中国のユーザーはそうした困難を越えて頑張って買ってくれていましたが、我々としてもそれに甘えることなく、ユーザー体験を向上させるためにさまざまな対策を取ってきました。

日本市場の特殊性を「当たり前」と思うと痛い目に遭う、出店するなら相当の覚悟が必要、ということですね。
いまお聞かせいただいた経験を元に作られた企業向けグローバルECプラットフォーム「Lingble」について、詳しくお聞かせください。

原田:まず、「Lingble」には、すでに自社サービスであるDENIMIOで経験したセキュリティ、システム運用、物流、マーケティング、カスタマーサービスなどのさまざまなノウハウが詰まっています。

初期費用かつ月額固定費も不要としているので、利用する企業はノーリスクで越境ECを始められます。

グローバルECプラットフォーム「Lingble」

グローバルECプラットフォーム「Lingble」https://www.lingble.com/index/

また、私達はただのECプラットフォームを提供するだけでなく、クライアントとゴールを共有し、1つのチームとして事業に取り組むコンサルティングサービスも提供しています。

日本企業のなかには自社でECを立ち上げるより強いプラットフォームに出店すればいい、と考える向きもありますが、もしそこを退店してしまえば自社内にドメイン資産やデータといったアセットが残りません。

パッケージを利用して自社で展開することで、利用者側はアセットを得られるだけでなく、消費者との距離が近付き、機能のアイデアを出しやすくなると考えています。

こうした点を評価していただき、導入数が増えているのだと思います。

 

強いプラットフォームに出店すれば売れる機会が増える、との意見はしばしば聞かれるものですね。

原田:私はインターネットの世界にも「不動産的に価値を育む」という考えが当てはまると思っています。

プラットフォームに費用を払って出店すれば、確かにトータルのトラフィック量は大規模なのかもしれませんが、自社ドメインに訪れるトラフィックと比べるとその質は異なるでしょう。

だからこそ、入札価格が低いうちに広告出稿で自社ドメインに人が集まるようにし、ページランクを上げるように努力して、本当に自社の提供する商品やサービスにマッチする人、エンゲージメントを高められるユーザーと関係性を築くことができれば、プラットフォーム出店よりも自社ECを運営する方がリターンは大きいと考えています。

 

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エンゲージメントを高める、というのはマーケティングの最大の課題ですね。
プロスペクトフィールドでは事業のコンサルティングもされているとのことですが、具体的にはどのように助言しているのでしょうか?

原田:状況によってさまざまですが、せっかく越境ECを始めたのだから「ここでECをやっていますよ」とアピールしないと、欲しいと思っている人に気づいてもらえないということは初めの段階で説明しています。

日本企業はマーケティング費用を売上の5%に設定する、といった慣習があるようですが、私はむしろ売上を立てるためにマーケティング費用を投下するものだと考えています。

もうひとつは、こだわりすぎて海外のユーザーに分かってもらえない状態に陥らないように、ということです。

「良いものだから買うはずだ」と考えず、たとえば、新商品の企画段階から海外のその道の人気ブロガーと接触して、彼らに進捗を伝えてレビューしてもらい、彼らをフォローするユーザーに情報を拡げることで期待感を高めてボルテージを上げ、商品を買うまでのストーリーも楽しんでもらうような演出をすることもあります。

私達と一緒に越境ECにチャレンジしている企業はみんなこれを販売チャネルではなく情報チャネルとして見ています。

そうした視点を持ってもらい、定期的に現状把握をして次の手を打っていくことで、クライアントと一緒に事業を続けていきたいと考えています。

企業側にとっては新たな成長フィールドを得ることになりそうですね。
プロスペクトフィールドとしては、どんなメリットがあるのでしょうか?

原田:「DENIMIO」のユーザーに対して行うテストマーケティングを経て追加された機能等について、各企業からアイデアやバグの報告を出してもらえば「Lingble」はより魅力的なプラットフォームになっていくことでしょう。

それを活用して、契約している企業の売上が上がれば、レベニューシェアでの収益も得られます。そうした相乗効果でお互いに成長していけたら、と考えています。

では、最後に今後の展望についてお聞かせください。

原田:実は…私自身はあまりアパレルにこだわりはありません。さまざまな製品を持つ企業との協業やBtoB製品の越境ECもお手伝いしてみたいと考えています。

展開する市場も、仕入れをする場も、同じように増やしていきたいですね。

この事業を支えてくれるスタッフは、越境ECのノウハウを持つ人材であるため、世界各国に散らばっています。そうしたこともあり、彼らにとって気持ちよく感謝し合いながら働ける環境も整えていきたいです。

 

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