AI事例:NeoXが「MoAir」「神居秒算」の開発基盤にAlibaba Cloudを採用した理由

AI事例:NeoXが「MoAir」「神居秒算」の開発基盤にAlibaba Cloudを採用した理由
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NeoX株式会社 Founder & CEO 何書勉 氏

 

誰でも使えるAIを提供したい。NeoXが実現する「サイエンティストレスAI」の世界 

「人工知能の高い壁を打ち砕く」というコーポレートメッセージのもと、AIの専門知識がない人でも簡単にAIを使いこなすことができるサービスを開発・提供しているNeoX株式会社。なぜFounder & CEO 何書勉 氏は、そのような思いを抱くようになったのか? 起業の経緯やサービス開発の背景を探る。

 

――本日はよろしくお願いいたします。まずは御社の事業内容について教えてください。

 何:弊社は「人工知能の高い壁を打ち砕く」をコーポレートメッセージに掲げ、誰もが使えるようなAIの技術を開発しています。主な事業内容は「AR空間検索ツールの開発、不動産情報プラットフォームの提供、空間データベースの開発」であり、具体的なサービスとしては、専門家なしでAIモデルを高速作成できる「MoAir(モエアー) 」と、世界最大の中国語の日本不動産プラットフォーム「神居秒算(しんきょびょうさん) 」の2つがあります。

 

――それぞれのサービスの詳細は後程詳しくうかがいたいのですが、その前に何さんがNeoXを立ち上げた経緯から聞かせてもらえますか?

 

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何:私は高校まで中国で過ごした後、大学は京都大学に留学して「マルチメディアデータベース」の研究に取り組んでいました。今からもう20年以上前の話ですが、その研究は従来のようなテキストを蓄積するデータベースではなく、空間情報を蓄積するために最適なモデルをつくることでした。簡単に言うと、今目の前に見て言える空間をデータに落とし込むにはどうすればよいか、という研究ですね。

その後、2007年に情報学博士号を取得して、楽天に入社。3年目の2009年に執行役員になり、楽天中国版「楽酷天」を立ち上げるために中国でCEOとして現地法人を立ち上げました。このときに、会社の立ち上げから現地での採用、システムの設計、さらには中国最大手ネット企業の「バイドゥ」との連携まで、一通りのことを経験させてもらいました。

2011年にはこの経験を買われ、テンセントと業務提携したGREEから「中国で開発センターを立ち上げてほしい」とスカウトされて転職して、楽天と同様に現地でゼロからの会社設立を行いました。普通のサラリーマンではできないこの2つの経験をしたことで、経営者側の発想を身に着けることができたことがNeoXの起業へと繫がっています。

 

――楽天とGREEで経営者として会社の立ち上げを経験されて、その後、すぐにNeoXを起業されたのでしょうか?

何:いえ、楽天とGREEで経験した中国の事業が本当に大変だったので(笑)、しばらくは中国と接点をもたないようにしようと一度日本に戻って、「この業界は絶対に中国とは縁がないだろう」と思って不動産業界に飛び込みました。そのときはまさか中国人が日本の不動産を買うなんて考えもしなかったんです。

当時、不動産のプロパティエージェントという会社から私の研究分野である「AIを使って不動産の相場を瞬時に計算するロジックをつくれないか」と相談されていて、興味があったんですね。それでよく考えてみると、不動産の相場情報は世界に2つと同じ情報が存在しないうえ、「経度・緯度・高さ(階数)」に加えて「日時」の4次元で変化する“究極の時空間データベース”だと気づいたんです。このデータベースシステムを構築できるのは日本で私しかいないと思いましたね。

そこで開発したシステムは、物件を売りたい人が物件の一括査定を瞬時にすることができて、その情報が不動産企業に送られるという“物件を売りたい側”のビジネスモデルでした。そのシステムを元に2017年に“物件を買いたい側”のモデルへと変更して独自に開発した、中国語の日本不動産プラットフォーム「神居秒算」をリリースするためにNeoXを設立しました。

 

――「神居秒算」とはどのようなサービスですか?

何:神居秒算は、日本の不動産を購入したい中国人投資家のためのプラットフォームです。使い方は主に2つあります。1つは、中国人が中国でこのアプリを開くと、日本の地図が現れるので、投資興味がある場所をタップします。そうすると、画面上に「値段」「取引量」など不動産相場関連の情報がヒートマップとして可視化され、過去の取り引き事例も載っているため、投資家は仲

介業者を挟まずとも日本の最新の不動産情報を視覚的に入手することができます。

 

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(神居秒算のTOPページ)

もう1つの使い方は、中国人が日本に来た際に街中を歩いていて「このマンション、投資にいいな」と思ったら、アプリを起動してスマホをマンションにかざすと、そのマンションに関する相場情報が出てきます。さらに売り出し中のマンションの場合はクリックすると詳細も見ることが可能です。

神居秒算が目指しているのは100%正確な不動産の位置情報を提示することです。たとえば、日本の不動産の表記には「3-5」などで使う「-」の文字コードがじつに11種類もあります。弊社のデータベースの情報は私がそれらの不動産に関する全ての表記ゆれを統一するためのプログラムを半年かけてつくったので、ノイズが除去された綺麗なデータだけがあがっています。多くの不動産企業の社長は同様のデータベースが欲しいと考えますが、私のように、経営者・プロジェクトマネージャー・プログラマの役割を1人で担うことができないため、関わる人材が分散してしまい「本当に欲しいプログラム」を追求することがなかなかできないので、開発することも難しいと思います。

 

――「神居秒算」には御社オリジナルの技術が使われているんですね。その後、2018年にAIモデル作成の「MoAir」をリリースされています。このサービスの開発経緯も教えてください。

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(MoAirのTOPページ)

何:「MoAir」が生まれたきっかけは、とある日本企業が神居秒算に興味をもって協業をもちかけてくれて、その協業の仕事とは別に「展示会があるから車の物体認識をお願いしたい」と依頼されたことでした。その依頼を受けて、最初は車の写真を1枚ずつ、データ上で車の部分を囲んで、名前をつけてラベリングするという作業をしていたのですが、時間がかかりすぎて困っていたんです。

そこで私は「5人で1か月かかったところを1人で1日だけでできないか」と考えました。そうして生まれたのがMoAirです。まずは外形データを取り込むプロセスを自動化し、次にそのデータを認識するためにAIの機械学習を導入しました。開発をはじめた2018年当時は機械学習がなかなかうまくいかず、アルゴリズムやパラメータを調整して、何度もやり直しました。

その結果、当時は1つの物体の機械学習に6時間ほどかかっていましたが、今では数分で完了するまでに成長しています。MoAirの良いところはユーザーが物体認識をすればするほど、学習データが蓄積されていき、精度が高くなっていく点です。だからぜひみなさんに使ってほしいですね(笑)。

現在のMoAirは学習中の「再現率」や「精度」を曲線で可視化しているので、今が学習のどの段階にあるかを一目で見ることができます。

 

――MoAirは具体的にどのように使われているのでしょうか?

何:MoAirの簡単なデモをお見せしましょう。今、目の前にコップがあります。まずはスマホアプリでMoAirを立ち上げ、空間の名前を「取材ルーム」などと任意で入力し、次に認識するものが立体の3Dか、平面の2Dかを選択して、スマホのカメラで撮影します。今回は3Dを選択して、コップのエリアを画面上でスワイプして囲み、あらゆる面から撮影します。そこに「コップ」と任意で名前をつけて、機械学習をはじめます。数分が経つと、MoAirはこの物体を「コップ」と認識するので、カメラであらゆる角度から捉えても「コップ」と答えてくれます。

 

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この機能が実際にどのように使われているのかを紹介します。大きなシーンではアリババグループが提唱するニュー・リテールの分野で「無人レジ」のシステムとして使われています。中国の農村部のお店にはレジがないところがまだたくさんあり、商品に値段シールを貼ったり、店員が電卓で計算したりと、大変手間がかかっています。

MoAirはAIの専門知識が全くなくても使うことができる「サイエンティストレス(科学者不要の)AI」なので、店員さんが自分でMoAirを立ち上げて、お店にある商品を撮影して、商品名と値段を登録します。そうすると、お客さんがもってきた商品を1つずつスマホのカメラで認識すれば商品名と値段が表示される「無人レジになる」というわけです。

 

――専門知識がなくても使えるというのはとても便利ですね。他にはどんな利用法がありますか?

何:MoAirと同様の機能を備えた「MoArt」というアプリがあります。これは名前通り、美術品をAIで認識するアプリです。

美術業界は私が以前携わっていた不動産業界と同様にアナログの世界で、今も美術館や博物館では展示品の情報をアナログで記載されていますよね。そのボードに書くことができる情報量には限りがあるので、私のような美術の素人は詳しいことがわからずになかなか楽しむことができません。

 

その点、MoArtは「展示品の本来の情報は展示品自体(の形)がもっている」という考えに基づいているため、QRコードと違って遠くからでもカメラが展示品を認識することができれば、さまざまな情報を得られるため、美術に疎い人でも楽しめる可能性があります。現在、MoArtは実際に中国のいくつかの博物館で導入されていて、今後は日本での展開も計画しています。

――サービスのご説明ありがとうございました。御社は現在、システム環境にAlibaba Cloudを採用していただいていますか、そのきっかけは何だったのでしょうか?

何:最初は日本と中国、共に他社のパブリッククラウドを利用していたのですが、中国のネットワーク状況が不安定な状態が続いたんです。おそらく中国の広大な面積がきっかけで均一のアクセススピードを出せなかったのだと思います。それでいろいろなパブリッククラウドを試したところ、Alibaba Cloudが一番安定していたので、まずは2017年夏に中国側のインフラ環境をAlibaba Cloudに切り替えました。

日本のほうを変えなかったのは、当時私が日本にAlibaba Cloudのサービスがあると知らなかったからです。その年の冬にSBクラウドの営業の方と知り合う機会があり、日本でもサービスがあると知ったので、すぐに切り替えました。その結果、ネットワークも安定して、さらに中国と日本と一元管理できるようになったので、とても便利になりましたね。

 

――ネットワークの安定以外にAlibaba Cloudの強みと感じるところはございますか?

何:弊社は物体認識を行っているため、日々、重いデータを日本と中国で同期させる必要があります。その点、Alibaba Cloudは日本と中国にリージョンがあるので、業務をスムーズに遂行することができます。私は「日本企業が中国でビジネスを展開するときはAlibaba Cloud一択」だと思っています。

もう一点、Alibaba Cloudが提供している超高性能の計算処理能力をもつNVIDIAのGPUを使っていますが、これは非常に高額で私たちのようなベンチャーが単独で手を出せるものではありません。それを当たり前のように使うことができる点もうれしいですね。

あとはサポート面も素晴らしいです。以前利用していた他社クラウドのときは、困ったときがあってもなかなか対応してもらえないことがありましたが、Alibaba Cloudはすぐに対応してくれるので助かっています。営業の方とも気軽に相談できるのもうれしいですね。これはAlibaba Cloudというよりも、SBクラウドだからこその“日本式のおもてなし”だと感じています。

 

――ありがとうございます。最後に、Alibaba Cloudへの期待を教えてください。

何:技術やサービスに不満は全くありません。これからも当社のようにAIや機械学習エンジニアにとって信頼できるサービスを提供して欲しいと思ってます。

 

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