コロナ危機の美容院を救う出張サービスの成功事例(山谷剛史の中国ITトレンド)

 中国で新型コロナウイルスにより外出が制限された際には、淘宝網(タオバオ、Taobao)や天猫(ティエンマオ、Tmall)や京東(ジンドン、JD)などの定番ECサイトほか、生鮮ECサービスや、レストラン・食堂からのフードデリバリーが役立ちました。

 オンラインショッピングで届いた小包については、宅配業者はもともと集合住宅に備え付けの宅配ロッカーに入れていたので、宅配業者と消費者が接触することなく渡すことができました。一方、食事や食材を運ぶデリバリードライバーは新型コロナウイルス前は注文者に手渡ししていましたが、購入者とドライバーの非接触ニーズがある中で、マンションの入口に専用のシンプルな棚が設置され、そこに商品が置かれるようになりました。

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〈デリバリーなどの荷物置き場〉

 フードデリバリー用でもスマートフォンで開閉するスマートロッカーが登場しています。既に複数のメーカーがリリースし競争が起きているため、低価格化が進み、中国全土で宅配ロッカーのように普及するでしょう。

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〈紫外線消毒と保温が特徴のデリバリー用ロッカー〉

 集合住宅の入口近くに宅配物一時預かり場所を設置し、そこで外部からの宅配業者やデリバリードライバーを止めたからこそ、安心してモノの宅配やデリバリーを依頼できました。商品を運んでくれれば生活がなんとかなるかというとそうでもありません。例えば1か月も待機していれば、髪を切りに行きたいという人も出てくるけれど、されど外には出られないわけです。

 

新型コロナ対策の「出張理容サービス」

 中国の報道を見ると、外部の人間入場禁止のマンション団地の特別措置として、1日限定でマンション団地に理容師を呼んで、マンション団地の住民を対象に、出張カットサービスを行ったマンションがあるようです。人と人が密に接する理容サービスを実現するために、実施した各マンション団地では、以下の工夫をしたと複数の報道されています。

・未感染の理容師を派遣する
・ロビーのようなスペースのある場所で実施し密閉空間を避ける
・ネットで予約制とする
・開始日前にロビーなど目立つところでQRコードが入った告知を用意する
・カット前に場を消毒する

 なるほどこうすれば、ヘアカットのような対面サービスを比較的安全に実施できそうです。家に入ってサービスを行うよりも、広い空間でサービスを行うほうが安全なのもうなずけます。大規模マンション内の住民全てに感染症状が出ていないという前提の上ではありますが、あると嬉しいサービスです。

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〈北京大学の建物内にて〉

出張サービスや代行サービスがコロナ危機を救う

 ところでフードデリバリーは2015年頃の、中国の「シェアサービスブーム」前にIT業界で沸き起こった「O2O(Online to Offline)サービスブーム」の中で普及したサービスのひとつです。O2Oはフードデリバリーのように、実店舗にオンラインで注文したり、人に依頼したりするサービスです。O2Oサービスの中には、理容師を派遣するヘアカットサービスを行う業者もありました。ではヘアカットのような、「広い共用スペース」「ネット予約制で順番に個人が利用」というサービスではどのようなものがあるでしょうか。

 O2Oを代表するアプリの一つが「58到家」というものです。それとは別に当時はO2Oの各サービスに特化したものもありました。「美容師」「ネイリスト」「マッサージ師」「調理師派遣」「医者派遣」「洗車」「車の修理」「家電の修理」「家のリフォーム」「家事代行(掃除、洗濯)」「廃品回収」「保母」「ペットサービス」「家庭教師」「ドライバー派遣」「カメラマン派遣」などをそれぞれが提供していたのです。この多くを「58到家」はカバーしました。

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〈58到家〉

 この中で、大きな空間でひとりひとり順番で対面式でできるサービスでは、「美容師」「ネイリスト」「マッサージ師」「カメラマン派遣」があり、前述の理容師サービスと同じ要領でできそうです。小さな家電やちょっとしたサイズの修理なら、宅配ロッカーを活用した手法もできそうに思えます。面と向かって対応するものでは、他にも「短時間の家庭教師」や「悩み相談」や「占い」などもできるでしょう。

 中国で一時は多数の企業が立ち上がったO2Oサービスですが、その多くが淘汰されました。近年ではO2Oという言葉は使わない形で、代行サービスが少しずつ登場してきています。例えばタピオカミルクティーを代わりに買って、代わりに飲んだような写真を撮影して送ってもらうというものです。その代行サービスの延長で、新型肺炎が流行したことを背景に、「墓参り代行業」も登場しました。これは先祖をともら4月頭の「清明節」に、代わりに墓参りをして、現地からレポートするものです。代わりにどこかに行って何かをやってもらうというのも、誰もがスマートフォンを所有し、高速なモバイルインターネットが利用できる今、できることです。

 ステイホームが叫ばれる中、家こもりを実現するための様々な中国のネットサービスを日本流にアレンジして実施する必要があるでしょう。店が一時休業となった結果、様々な手に職をもっている人が待機しています。日本には、町内会・自治会の会議室があり、大規模マンションにはロビーやゲストルームがあります。こうした場所で必要としてる人と、必要とされる人をつなぐサービスを、安全な場で提供してみてはいかがでしょうか。

筆者プロフィール

 

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山谷 剛史(やまや たけし)

1976年東京生まれ。東京池袋近辺、福岡市、中国雲南省昆明育ち。フリーランスライター。
2002年より一貫して中国やアジア各国のITやトレンドについて執筆。中国IT業界記事、中国流行記事、中国製品レビュー記事を主に執筆。

主な著書に『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書)』『ゼロからはじめる 海外旅行でスマホ活用 スマートガイド』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち (ソフトバンク新書)』など

公式プロフィール:https://about.me/yamayat
Twitter:https://twitter.com/YamayaT

 

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