SBクラウド株式会社logo

独身の日で成功を収めた百貨店「銀泰百貨(INTIME365)」のニューリテール化事例【山谷剛史の中国から学ぶITトレンド】



銀泰百貨(INTIME365)
銀泰百貨(INTIME365)銀泰ホームページより

「双11(ダブルイレブン、単身の日、独身の日とも)」と言えば、各種メディアでも報じられているように中国ナンバー1のECイベントのこと。アリババの天猫(Tmall)をはじめ、京東や拼多多(ピンドゥオドゥオ)などもこぞってよい結果を発表しています。それに加えて、アリババが買収したデパート「銀泰(銀泰百貨、INTIME365)」もまた、盛況であったことを発表しています。

銀泰によると、「デジタル会員が倍増」し、「リアル店舗のない上海、広州、重慶などの在住者が半分を占め」、「14店のネットショップで前年同期比273%増」を記録したと発表しています。

百貨店のネットショップで特に化粧品が特に売れたうえに、多くの若い女性が11月11日にリアル店舗に押し寄せました。オンラインとオフラインを同一価格にしたからこそ、リアル店舗もにぎわったのです。

とにかく化粧品がよく売れた(銀泰公式アカウントより)
とにかく化粧品がよく売れた(銀泰公式アカウントより https://zhuanlan.zhihu.com/p/269796943

銀泰は1998年に創業された、杭州発の老舗百貨店です。杭州といえば、アリババの本社があることで知られています。2013年の「双11」のときにアリババと戦略的提携を行った後、2014年にアリババによって銀泰に出資され、2017年には銀泰はアリババの子会社となったのです。

その後、アリババが提唱した「ニューリテール」という中核戦略が、テックトレンドにあがるようになりました。このニューリテールとは、モバイルインターネットとデータテクノロジーを活用して、オンラインとオフラインを融合させた新しい消費体験を提供することを推進するものです。

それ以来、銀泰はAndroidを使用するとアパレルブランドの商品がバーチャルで着られる「AR着せ替えミラー」など、思わず来店したくなるようなサービスを実施。加えて、「双11」開始前に認知を広げるためのパレードを開催するなど、数々の施策を打ってきました。

その銀泰が2020年の「双11」セールに成功した秘訣は、「お得さ」と「百貨店のニューリテール化の成功」です。

たとえば、銀泰はお得に使用できる下記のようなタイプのチケットを用意しました。

・1000元買ったら200元券がもらえるチケット
(定価から下げられない化粧品が安く買えるようになるため)
・無料のハンバーガー交換券や一部レストランの食事が半額になるチケット
(フードフロアで食事をしてもらうため)

チケットの他にも、アパレルブランドを中心に様々なブランドの商品が割引価格で販売されました。もっとも、アパレル商品の割引は中国のどこのデパートでもセール期間に行われることなので、客が化粧品に集中したのも納得です。

またニューリテール化については、各種アリババ系アプリから銀泰で使える割引券(紅包)が配布され、銀泰への誘導を行いました。たとえば、地図の高徳地図・動画の優酷・物流の菜鳥・デリバリーのeleme・O2Oの口碑などのアプリが対象でした。

さらに銀泰のアプリ「喵街銀泰(miaojie)」では、オフラインと同様のセールをライブコマースで開催。加えて、喵街銀泰の会員向けの割引プランも用意されました。

銀泰のアプリ「喵街銀泰(miaojie)」
銀泰のアプリ「喵街銀泰(miaojie)」

百貨店のライブコマース販売は、今年の冬から春先にかけて中国で新型コロナウイルスが猛威を奮い客入りが激減したときに、一気に普及しました。同時期に、ライブコマース販売に加えて販売員との化粧品のオンライン相談も広まりました。

「双11」でも、銀泰は商品販売のライブコマースを実施しました。ランコム、エスティローダー、ドゥ・ラ・メール、ヘレナ ルビンスタイン、イヴ・サンローランといった著名ブランドと提携し、配信にはプロ集団のMCN(Multi Channel Network)を活用しました。最終的には4,740人がライブコマース配信に参加し、銀泰に関する配信は4,000回を超える数字になったと言われています。

銀泰百貨の商品をライブコマースで販売 (銀泰公式アカウントより)
銀泰百貨の商品をライブコマースで販売 (銀泰公式アカウントより https://zhuanlan.zhihu.com/p/269796943

今年は特にライブコマースがトレンドの波に乗っていることから、1000万人を超える人が会員となり、ライブコマースを通じて購入しました。またトレンドに合わせて銀泰のオンライン販売を行ったことにより、銀泰のある地域はもちろん、ネットトレンドに敏感な上海や広州といった銀泰が進出していない地域からも多く注文されたのです。

喜ばしい事態ですが、これを迅速に処理しないと、利用者の評価も下がります。処理面においては19年9月末に独自サーバーの運用を撤廃し、Alibaba Cloudによるクラウドシステムへと100%移行を行いました。

また物流面においては、アリババの蜂鳥やelemeを活用し、銀泰の18店舗から10km以内の地域には2時間で、10~30kmの地域にはその日のうちに商品が到着しました。それでももっと早く商品を手に取りたい人々が、銀泰のリアル店舗に向かったのです。

銀泰百貨の商品を運ぶデリバリースタッフ (銀泰公式アカウントより)
銀泰百貨の商品を運ぶデリバリースタッフ (銀泰公式アカウントより https://zhuanlan.zhihu.com/p/269796943

2020年の「双11」を振り返ると、銀泰では特にオンラインでの化粧品の売上が目立ちました。オンラインとオフラインを同じ条件にして、オンラインでの注文には店舗から爆速で対応する。これはまさにニューリテールスーパーの盒馬鮮生をデパート向けにアレンジしたものと言えますし、ニューリテールのデパートの成功例を示したともいえます。来年以降もその時々の時流を掴みながら、銀泰はニューリテールを実践していくことでしょう。

関連記事

www.sbcloud.co.jp

www.sbcloud.co.jp

www.sbcloud.co.jp

www.sbcloud.co.jp

www.sbcloud.co.jp

www.sbcloud.co.jp

筆者プロフィール

f:id:sbc_kitano:20200219152250p:plain

山谷 剛史(やまや たけし)

1976年東京生まれ。東京池袋近辺、福岡市、中国雲南省昆明育ち。フリーランスライター。
2002年より一貫して中国やアジア各国のITやトレンドについて執筆。中国IT業界記事、中国流行記事、中国製品レビュー記事を主に執筆。

主な著書に『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書)』『ゼロからはじめる 海外旅行でスマホ活用 スマートガイド』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち (ソフトバンク新書)』など

公式プロフィール:https://about.me/yamayat
Twitter:https://twitter.com/YamayaT