中国向けWebサイトの基礎知識①ICPライセンスって何?

中国向けにWebサイトを開設する場合、またオンラインビジネスを展開する時に必ず覚えておかなければいけないことがあります。それは「ICP」という中国独特の制度についてです。

多くの人が、日本語のWebサイトに中国語を加えて、公開すれば中国の人に見てもらえると考えているかもしれませんが、「ICP」をクリアしなければビジネスに大きなロスをもたらします。今回のコラムではこの「ICP」についてSBクラウドの吉村 真輝が解説します。
(聞き手:SBクラウド株式会社 阿部 真人)

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中国でWebサイト開設に必要な「ICP(Internet Content Provider)ライセンス」とは?

ICP(Internet Content Provider)ライセンスについて語る吉村 真輝

まず、中国でインターネットビジネスを開始しようとする時、最初にやらなければいけないことは何でしょうか?

吉村:中国向けのウェブサイトの開設やインターネットに関して最初に覚えておかなければならないことは「ICP(Internet Content Provider)ライセンス」です。中国語表記は「备案 (Bei'an')」と言います。

たとえ、どのようなWebサイトであっても、中国国内でウェブサイトを開設するときは絶対にICP登録が必要になります。

 

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吉村:ICPには大きく分けてICP登録と商用ICPライセンスの二つの種類があります。

中国の場合、Webサイトを開設するときにはICP登録をして、誰がWebサイトの管理人なのかについて、国に届け出をしなければなりません。それが大前提となります。

それに加えて、ECやオンラインビジネスをしたいときは、商用ICPライセンスが追加で必要になります。ICP登録と商用ICPライセンスの大きな特徴です。

しかし、実際には外資系企業は商用ICPライセンスを取ることがほぼできないため、中国国内で何かのオンラインビジネスをしたいと思っても不可能です。では、どのようにするのかというと、中国内資の企業が前面に立つ、あるいは内資の企業と合併して事業を行わなくてはならないというルールがあり、単独でオンラインビジネスを手掛けることはできません。

 

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とてもハードルが高いように感じたのですが、よく日本企業が英語や中国語に切り替えられる多言語サイトを公開していますよね、あれは問題ないのでしょうか?

吉村:当然ですが、ICPは中国国内の制度なので、中国以外の国で中国語のWebサイトを立ち上げても特に問題はありません。日本国内に中国語のWebサイトを開設しても、中国からは検索エンジンやソーシャルメディアを通じてWebサイトへアクセスすることはできます。

 

中国の検索エンジンといえば「Baidu(百度)」ですよね。ICP登録してないWebサイトや日本にある中国語サイトはBaiduなどの検索結果に出てこなかったり、リスティング広告を出稿できなかったりなどの影響はないのでしょうか?

吉村:検索エンジンのアルゴリズムがICP登録の有無を評価していることはないのですが、検索エンジン対策をしていくとICP登録が必須となってきます。

例えば、Baiduの検索アルゴリズムはWebサイトの表示スピードを最も重視していると言われています。中国国外にWebサーバーを置くと、ネットワークのレイテンシー(遅延)が大きくなるため、表示スピードが遅くなってしまいますよね。

つまり、Webページの表示スピードを速くするには中国国内でWebサイトを開設する必要があり、裏を返すとそのためにICP登録が必要だということです。

でも、たとえICP登録があったとしても、Webサイトがとても重く、表示が遅くなってしまえば検索エンジンの評価は下がってしまいます。
ICP登録があるから評価が上がるのではなくて、ユーザービリティの高いWebサイトだから評価が上がるということは覚えておいてください。

ちなみにBaiduのリスティング広告を行う際にはICP登録は特に必要ありません。日本にWebサイトがあっても、Baiduにリスティング広告を出稿することは可能です。

 

結局中国向けのWebサイトを開設するには「ICP登録」が必須になるのですね。では「商用ICPライセンス」についても教えてください。これはECサイトなどのビジネスを行う際に必要なライセンスなのですか?

吉村:ECやSaaS、クラウドサービスなどのオンラインビジネスを展開する場合は「商用ICPライセンス」が必要になります。外資系企業は商用ICPライセンスの取得には制限があり、場合によっては取得できないこともあるのです。

また、ICP登録は登録制のため、正規の手順に従えば誰でも登録することが可能です。しかし、商用ICPライセンスは「許可制」となり、中国政府の審査が入ります。つまり、誰でも取得できるものではありません。

そうなると、日本企業は中国でEC事業やSaaS事業を展開できない、ということですか?中国進出をしている日本企業も多いと思いますが、どのような対策をしているのでしょうか?

吉村:多くの日本企業は現地法人を設立していますね。ただ、先ほどご説明したとおり中国では外資系企業は商用ICPライセンスの取得ができないので、現地企業との合弁会社を設立していたりします。

また、商用ICPライセンスを取得せずにオンラインサービスを提供する方法としては、オンラインで決済をせずにビジネスを行う、という方法があります。

 

オンラインで決済をしない?その場合、どうやってユーザーからお金を請求するのですか?

吉村:例えば、ECサイトの場合で説明します。商品の注文はWebサイトを通じて行ったあと、請求書をメールや郵送で送り、支払いを銀行振込で行う、という方法があります。
※ただし、管轄している行政によってICP登録の解釈が異なることがありますので、事前に管轄している行政へ確認することをおすすめします。

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TmallなどのECモールに出店する場合は商用ICPライセンスが必要ですか?

吉村:Tmallなどの第三者プラットフォームへの出店の場合は自社WebサイトやECサイトに該当しないため、商用ICPライセンスだけでなくICP登録も不要です。

プラットフォーマーへの手数料が発生してしまいますが、中国でEC事業を立ち上げる場合は、最初から自社サイトを開設するよりもまずはECモールに出店する方がいいかもしれませんね。

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スマホアプリを中国で提供する場合はどうなりますか?あれもECモールのような立ち位置だと思いますが。

吉村:中国ではiPhoneのAppStoreやサードパーティーによるAndroidマーケットがあります。(ちなみに中国ではGoogle Play Storeは利用できません)このようなアプリマーケットにアプリを申請する時にはICP登録は不要ですが、中国国内にアプリ提供基盤がある場合にはやはりICP登録が必要ですし、アプリ内課金がある場合には商用ICPライセンスが必要です。ただし、ゲームやニュースアプリなどはICPとは別に個別の経営許可証が必要となる場合があるので、注意が必要です。

 

先ほど、外資系企業は商用ICPライセンスの取得ができない場合がある、という話がありましたが、ICP登録も外資系企業はできないのですか?

吉村:中国に現地法人がなくても、駐在事務所などの物理的な拠点があれば登録は可能です。決して外資系企業にはICP登録を認めない、ということはありません。中国国内でビジネスをしている人に対しては、必要書類を提出すれば誰にでも付与するという公平な制度なので、それほどICP登録を怖がる必要はありませんよ。

ICPライセンスに関するセミナーで講師を務める吉村

ICPライセンスに関するセミナーで講師を務める吉村

今回はICPライセンスの基礎知識について解説しました。下記の記事ではICP登録の申請方法について解説しています。

www.sbcloud.co.jp

 

 下記の記事ではICPライセンス不要で中国向けWebサイトを開設する方法を紹介しています。

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【お知らせ】7月26日「中国向けWebサイト」に関するセミナーを開催します。

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解説者プロフィール

吉村 真輝

吉村 真輝(よしむら まさき)

SBクラウド株式会社 ソリューションアーキテクト

2019年1月、SBクラウド株式会社入社。Alibaba Cloud 公式トレーナーとして日系企業の中国におけるクラウドサービス利用を数多く支援していることに加え、日中ビジネスのスペシャリストとしての一面もあり、両国の最新事情や動向にも精通している。また、JAIPA Cloud Conference 2019(https://cloudconference.jaipa.or.jp/)実行委員長も務めていている。趣味はDJ。