「AIの力で経理会計業務を変える」ファーストアカウンティングが深層学習にAlibaba CloudのGPUを採用した理由

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ファーストアカウンティング株式会社 共同創業者 松田顕 氏、社長室 松原正和 氏

AIの力を使って「経理、その先へ」という壮大なビジョンを実現しようとしているファーストアカウンティング。2016年設立の若い会社だが、同社が提供する経理会計業務に特化したAIソリューション「Robotaシリーズ」は、フィンテックアワード2019で優勝するなど、大きな注目が集まっています。

今回はファーストアカウンティング株式会社 共同創業者  松田顕氏、社長室 松原正和氏に、同社のAI会計ソリューション「Robotaシリーズ」の特徴と、システム構築の状況などを聞きました。

 

フィンテックアワード2019の優勝、おめでとうございます! 最初に、評価を受けた御社のソリューションについて教えてください。

松田:ありがとうございます。弊社が提供するソリューションは、経理会計業務に特化したAIソリューション「Robotaシリーズ」です。ポイントは、会計システムそのものをつくっているのではなく、会計システムの利便性を向上させるAIソリューションをつくっている点です。

「領収書Robota」「請求書Robota」「通帳Robota」は、AIの深層学習によるOCRで、写真撮影またはスキャンしたレシートや領収書、請求書、銀行通帳の画像から日付や金額などの情報を高精度に読み取り、データに変換します。そのデータを、別のAIである「確認Robota」が正確性をチェックします。

 

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また、「仕訳Robota」は数十万件の実際の仕訳データから開発・深層学習したAIにより、読み取った金額や取引先等のデータを元に自動で仕訳を行います。他にも、経費申請で利用される台紙に添付された証憑から、領収書を1件ずつ認識し、自動的に向きを整えてデータ化する「台紙切取Robota」もあります。

これらのソリューションにより、会計業務における負荷を大幅に軽減し、最終的には会計業務からデータ入力の過程をなくします。私たちは社名の「ファーストアカウンティング」の通り、速く正確な会計サービスを提供し、世界の会計の常識を変えていきたいと考えています。

 

「世界の会計の常識を変えていきたい」ということですが、なぜそのように考えるきっかけは何だったのでしょうか?

松田:そこには代表取締役の森啓太郎の体験が大きく影響しています。森は以前「安全な食品を届けよう」と検査済みの食品のみを販売するEコマースの会社を設立しました。

このときに初めて本格的に自社の会計業務に取り組んだ森は、1枚1枚手入力しなければならない領収書など、会計業務に多大な時間と労力がかかってしまうと、経営上の意思決定までに時間がかかると痛感したそうです。その後、2015年にAIが出てきたタイミングで「AIであればこの問題を解決できるのではないか」と考えた森は2016年にファーストアカウンティングを立ち上げました。

ただ、森は営業出身であり、技術者ではなかったので、エンジニアとしてキャリアを積んできた私に知人を介して声がかかり、2人でソリューションの開発に取り組みはじめました。

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写真中央右が代表取締役社長 森啓太郎 氏(「フィンテックアワード2019」表彰式より)

それで冒頭にご紹介いただいたRobotaシリーズが生まれたというわけですね。開発するまでにはさまざまなご苦労があったのでは?

松田:そうですね、私はエンジニアですがAIの専門家ではないので、「AIで会計の問題を解決したい」と言われても、どうしてよいかわかりませんでした(笑)。

それでまずはAIのエンジニアを探すことになり、あるエンジニアの勉強会に参加したところ、ある大学生にたまたま出会ったんです。そのとき彼は、数独パズルを写真で撮影して、AIで分析して解くというアイデアを発表しており、非常に才能があると感じました。

それはまさに私たちが考えていた領収書の自動読み取りと同じ発想なので、ぜひ一緒にやりたいと思って一所懸命説得したところ、「面白そうですね」と協力してくれることになったんです。当時、彼はまだ大学4年生でしたが、彼の周囲の協力もあり、2016年11月から開発をスタートして、17年3月頃に「仕訳Robota」の最初のバージョンに完成しました。今は彼を含めて複数のAIエンジニアが在席しています。

 

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数カ月で最初のバージョンをつくられたとは凄いですね。改めて御社のAIソリューションについて詳しくうかがいたいのですが、「証憑読取りはOCRを使っている」ということですが、他の会計システムもOCRを使っていますよね。明確な違いはやはり“AI”でしょうか?

松田:その通りです。私の感覚ベースですが、通常のOCRはまだ読み取り精度が低く、結局全部を見直すか、または最初から手入力したほうが速いものがあったりします。

その点、弊社のOCRは経理会計業務に特化した開発と学習を行なっているため、この領域の証憑の読取りは9割以上の精度を出すことができます。この精度であればほとんど修正する必要がないので、業務を圧倒的に早くすることが可能になります。

また、通常のOCRは文字情報を読み取るだけのものですが、弊社のOCRはロゴマークも読み取ることができるので、たとえばレシートに印刷されているロゴから店名や社名を認識することも可能です。

弊社はAI関連にする特許を複数取得するなど、会計領域のAI技術に積極的に投資しております。

 

「仕訳Robota」の特徴も教えてください。

松原:通常の会計システムは「勘定科目」まで判断することができませんが、弊社の仕訳RobotaによるAI自動仕訳は、たとえばタクシーの領収書を読み取ったら「旅費交通費」など、自動で勘定科目を導き出して仕訳をすることが可能になります。これは冒頭でお伝えした通り、経理会計業務に特化したAI開発と、数十万件の教師データをAIに深層学習させているからこそできることです。

また、会社ごとに仕訳のルールを設定することもできます。会社で購入しているペットボトルの水は、「福利厚生費」か、「会議費」か、これはどちらでも正しいので会社によって仕訳の方針が異なりますよね 。そこで弊社の仕訳Robotaは、その会社の過去の仕訳の情報をAIに学習させることで、各社の方針にしたがった仕訳を自動で行います。

 

とても便利なサービスですね。これをAPIとして提供しているので、さまざまな会計システムなどで使われているということですね。

松原:はい、既に複数の会計システムの裏側でRobotaシリーズが使われています。みなさんも気づかないうちに使われているかもしれませんね。

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Robotaシリーズを展開するにあたり、Alibaba Cloudをご利用いただいているわけですが、最初にクラウド関連はどのようなシステムを構築されたのでしょうか?

松田:AIの開発システムをつくるためには、2つやるべきことがあります。1つは深層学習させる環境づくりと、もう1つはお客様に提供するサービスの環境づくりです。どちらもAIが必要で、そのためにGPU(Graphics Processing Unit/画像処理装置)を使うのですが、深層学習するためには膨大な時間がかかることもあって、ここのコストが非常に高額になります。

最初は、大手のクラウドサービスを使っていたのですが、エンジニアが増え、学習させるリソースも増えるに従い、コスト面が厳しくなってきたので他のクラウドへ移行することにしました。でも、なぜか移行先のクラウドはアラートもなく突然サーバが再起動してしまうトラブルが頻発しておりました。ベンダーに問い合わせても、原因不明という回答が返ってきてしまって……。どうしようかなと困っていたんです。

 

そこでAlibaba Cloudに着目していただいたんですね。

松田:はい、実は最初の段階でAlibaba Cloudも試していて、スペック的には問題なく使えて、コストも他社より安く、安定的に稼働させられることも実証済みでした。ただ、東京リージョンではまだGPUが提供されていなかったこともあり、採用を見送っていたんですよね。

そのため、再度クラウド移行を検討した際にAlibaba Cloudのことが頭に浮かび、営業の方に相談することになりました。その時には東京リージョンでもGPUが利用できるようになっていたため、最終的にお客様向けのほうは従来のクラウドを継続し、深層学習させる裏側のシステムをAlibaba Cloudを利用することに決めました。

 

システム移行は問題なく完了しましたか?

松田:問題はありませんでした。弊社は学習系の膨大なデータがあるので、それを移す環境を整えるのは手間がかかりましたが、それ以降はスムーズにすることができました。現場のエンジニアもサーバの不具合に悩んでいたので、移行に対してネガティブな反応はありませんでした。お客様向けのサービスのほうも止めることなく、順調に移行できたと思います。

 

最後に、今後のAlibaba Cloudに期待することを教えてください。

松田:Alibaba Cloudは他社クラウドよりも後発ということもあるのか、その分洗練されたシステムがつくられていると思います。我々が採用させていただいた理由の1つにコスト面がありますが、AIの深層学習には多大なコストがかかるものなので、これからも低コストでご提供いただきたいですね。

また、今は東京リージョンのElastic Compute Service(ECS)でNDVIDIAのGPU(NVIDIA GPU CLOUD:NGC) を数台利用していますが、時期によっては大量の計算が必要になることがあり、急なサーバー増設を行うこともあります。他社クラウドの場合は台数制限があったり、急な増設に対応できないこともありますが、Alibaba Cloudはオンデマンドで柔軟に対応していただけるのはありがたいと思っています。

 

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