画像認識AIをEC運営業務に活用、SBクラウドの開発者が語るアリババ発AIの魅力

SBクラウドは「ECサイト運営支援 画像認識AIソリューション」の提供を開始しました。

コロナ禍の外出自粛で実店舗への来客数が落ち込む中、小売業界はECへの投資を拡大しておりますが、ECサイトの運営にはさまざまな課題があり、担当者の業務は増える一方です。

この記事では「ECサイト運営支援 画像認識AIソリューション(以下、画像認識AIソリューション)」のサービス企画・開発担当者がサービス開発の思いを語るインタビューをお届けします。

ジョン ソルミン

ジョン ソルミンSBクラウド株式会社
ソリューション事業室

韓国IT企業にて、IoT・AI関連のPMとして4年間従事。Smart Home IoT ,、AIスピーカーの企画や機械学習のデータ分析業務に携わり、小売、金融データのプロジェクトを担当。並行して、IBC(オランダ)、BBWF(ドイツ)など海外展示会のマーケティングおよび海外スタートアップとのアライアンス活動に従事。
2020年3月よりSBクラウド入社し、ソリューション事業の企画を担当している。

山田 佑輔

山田 佑輔SBクラウド株式会社
ソリューション事業室 課長

学時代から画像認識技術を研究。SIerや国産パブリッククラウドサービス事業者にて、設計・構築・プリセールス・サポート・新規サービス企画など幅広く経験し、インフラ歴は14年。
2018年にSBクラウドに入社し、AIチームを立ち上げ。以降、多くの企業へのAI導入プロジェクトを主導。

ECサイト運営業務の課題

まず、EC業界をとりまく環境について教えてください。

ジョン:グローバルなトレンドからお話ししますと、コロナ禍で大手小売業のECへの投資が加速しています。実店舗での買い物が難しくなったことから、顧客との接点としてECサイトの役割がさらに重要になっています。

例えば、アメリカのウォルマートは2020年春にオンライン販売や宅配サービスを強化しました。例えば、人と人との接触を最小限に抑えた宅配サービス「エクスプレスデリバリー」は「商品在庫状況」「配送車・配達員の空き状況」「交通状況」「気象情報」をもとに機械学習を活用して高精度な配達経路を計算し、さらに顧客の不満を軽減する配達状況の情報を提供して、注文を受けてから2時間以内に商品を宅配するサービスです。

また、ECで注文した商品を店舗の駐車場で車に乗ったまま受け取れる「カーブサイドピックアップ」というサービスも全米に展開しています。

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その他のトレンドとしては、オンラインモールへの出店ではなく、自社サイトを持って直接消費者とつながるD2C(Direct to Consumer)ビジネスに参入する企業も増えています。

日本でも化粧品や食品メーカーなど、さまざまな企業が展開してますよね。D2Cモデルの魅力は企業が消費者と直接の接点を持てることだと思います。企業側は消費者ニーズを的確に把握することができるため、商品やサービスの向上が期待できます。

そのようなトレンドの中で、ECを展開する企業はどんな課題を抱えているのでしょうか?

ジョン:EC運営にはさまざまな業務がありますが、「商品管理」に関する課題は 当社がヒアリングした複数のEC事業者様から聞かれた声です。 ECは実店舗と違って場所の制約を受けないため、なるべく多くの商品を掲載したいと運営者側は思いますよね。しかし、取扱商品が多い店舗などでは商品登録の業務が追いつかず、ECサイトに公開している商品は一部に留まっているという状態もあるようです。 当社がヒアリングしたと大手アパレル業の場合、ECサイトで取り扱っている商品は実店舗の1割程度に留まるようです。

 

1割しかECでは販売できてないのですか。それは大きな機会損失とも言えますね。ちなみに、商品登録業務というのは具体的にどんな業務があるのですか?

ジョン:商品登録の代表的な業務を業界用語で「ささげ(撮影・採寸・原稿)」と言います。

ECサイト運営に必要な「ささげ」業務
ECサイト運営に必要な「ささげ」業務

「撮影」は商品の撮影です。画像についてはメーカーから支給されている商品画像だけではスタイルのイメージが伝わらないため、さまざまな確度から撮影をしたり、他の商品と組み合わせたコーディネートを撮影するなど、EC事業者側が独自に画像を制作しています。

「採寸」は商品の寸法を測定することですね。特にアパレル製品のS/M/Lなどのサイズ表記はメーカーによって変わってきますよね。「Mサイズを買ったけど、実際に着てみたら大きかった/小さかった」という経験をした方も多いのではないでしょうか。家具やインテリア製品なども、自分の部屋に置けるかを事前に確認しておきたいので、サイズの測定が必要ですよね。

「原稿」は商品情報の作成です。ECサイトの商品ページを見ると、商品名だけでなく、画商品説明文、カテゴリーやタグなどさまざまな情報が掲載されていますよね。カタログに書かれているような仕様の説明だけでなく、「着ごこち」「手触り」「素材感」などの情緒的な情報も必要になってきます。これらの「ささげ業務」は自社で対応できない企業のために、支援ツールや代行業者なども数多く存在します。

画像認識AIがタグを自動で抽出する「ECサイト運営支援 画像認識AIソリューション」

けっこう大変なんですね……。こういった業務を改善するためにこのソリューションは開発されたわけですか。「画像認識AIソリューション」とはどういったサービスなのでしょうか?

ジョン:ECサイト上での商品登録に必要なタグ情報を画像からAIが自動で抽出してくれるサービスです。これまで手作業でやっていた作業を自動化できるため、商品登録業務を効率化することができます。

タグ情報をAIが抽出するって、具体的にどのようなことをやるのですか?

ジョン:例えばこの画像を見てください。

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これは本棚ですか?

ジョン:はい、ちょっとオシャレなデザインですが、本棚ですね。 例えば家具のECサイトを運営している方が、商品情報をECに登録する際には「本棚(商品カテゴリー)」「ホワイト(色)」「シンプル(デザイン)」「化粧繊維板(材質)」「大人向け(ターゲット)」といったタグを手動で設定しています。

カテゴリーや色くらいだったら問題ないのですが、デザインなど定義があいまいなキーワードは主観で判断することが多いので、入力する担当者によってバラバラのキーワードになってしまうことがあるんですよね。

自社製品であればある程度のルールを作ることでコントロールができますが、複数のブランドを取り扱うセレクトショップなどはブランドごとにカテゴリー名称なども異なってきますよね。統一したルールを自社で作成しても、業界トレンドは常に変遷していくので、キーワードを随時アップデートでしていく作業が発生しまうのです。

たしかに、自社ルールを作ってもその運用が大変になってきますね。こういった課題を抱えている企業は多いのですか?

ジョン:はい、当社はこれまでさまざまな企業にヒアリングを行ってまいりましたが、この課題は大手から中小企業まで規模に関わらず寄せられる課題です。特にアパレル、家具インテリア、リユース企業などが多いですね。

さて、先ほどの画像を「画像認識AIソリューション」の管理画面に登録すると、このような判定結果が返ってきます。

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ほんとだ!これはどんな商品でも判定可能なのですか?

ジョン:アパレルや家具、インテリア、雑貨などを中心に約5,000種類のカテゴリーを判定可能です。

これを利用することでどんなメリットがあるのですか?

ジョン:手作業での入力作業が減るため、より迅速にECサイトへ商品を掲載することができます。また、ひとつの商品にさまざまなタグを付与できるため、ユーザー側も商品を見つけやすくなりますよね。結果として、サイト内の滞在時間の向上やあわせ買いへの誘導など、購買行動にも影響が出てくると思います。

アリババグループのノウハウが活かされた画像認識AI

ここからは、開発のリーダーである山田さんにソリューションの技術的な話を聞いていきます。

山田:本ソリューションの画像認識AIにはアリババグループの先端技術研究機関「アリババDAMOアカデミー」が開発した画像認識AIを活用しています。まず、アリババDAMOアカデミー(以下、DAMOアカデミー)について説明しましょう。

アリババDAMOアカデミーは2017年にアリババグループが設立した研究機関です。中国では「達摩院」と呼ばれています。DAMOアカデミーでは「マシン・インテリジェンス」「ビジョン・コンピューティング」「自然言語処理」「ヒューマン・マシン・インタラクション」「IoT」「フィンテック」などの分野における基礎的な技術研究に取り組んでいます。

アリババDAMOアカデミー(達摩院)(https://damo.alibaba.com/)

アリババDAMOアカデミー(https://damo.alibaba.com/

山田:DAMOアカデミーで開発されたAIはアリババグループの各種サービスで活用されるだけでなく、APIとして一般公開されており、小売、製造、公共、交通、金融、医療、エネルギーなどさまざまな産業へも活用されています。日本国内では、株式会社エムスリーが新型コロナウイルスによる肺炎の診断にDAMOアカデミーの画像認識AIを活用しています。corporate.m3.com

 

「アリババ=EC」のイメージが強いですが、小売業だけでなく医療向けの技術なども研究しているのですね。「画像認識AIソリューション」で利用されている画像AIにはどんな特長があるのですか?

山田:アリババグループのECで利用されているAIを簡単に導入できる、というのが大きな特長だと思います。

「画像認識AIソリューション」で利用しているAIはアリババグループのECサイト「Taobao」や「Tmall」で利用されているAI技術をもとに開発されています。両サービスにある膨大な数の商品画像をもとに開発されているため、高い精度で商品を判定することができます。

AI開発に関わる作業の7-8割くらいはデータの準備やAIモデルの精度の評価などの「学習プロセス」であると言われています。本ソリューションはこのプロセスを経ずにAIを利用できるため、時間と工数を大幅に削減することができます。

また、画像1枚から関連する属性データを自動で取得できる、という特長もあります。他社メガクラウドサービスなども画像認識AIは提供してますが、オブジェクト認識(画像の判定)にとどまっているという印象です。画像からカテゴリーやタグなどの属性データを引き出すというのはアリババグループならではの発想だと思います。
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DAMOアカデミーと協同で行った日本向けローカライズ

そもそも、なぜ「画像認識AIソリューション」を立ち上げようと思ったのですか?

山田:もともと、SBクラウドは2016年よりアリババグループのパブリッククラウドサービス「Alibaba Cloud」の日本向けサービスを展開していました。 そのため、アリババグループのさまざまな技術に触れる機会が以前からあったのですよね。特にDAMOアカデミーのAIの取り組みは私も気になっていたため、公開されているAPIはよくチェックしていました。

その中で、商品画像に特化したAIはアリババグループならではのユニークな技術だったので、これをもとにしたサービスは日本でも展開できるのでは?と思ったのがきっかけです。

ちなみにサービス開発にあたって、DAMOアカデミーとはどのようなやり取りをしていたのですか?

山田:会議は基本的に中国語で行われました。私は中国語はできないのですが、SBクラウドは中国に駐在経験のある社員や中国人エンジニアもいるのでコミュニケーションはスムーズに進みました。「画像認識AIソリューション」で利用するAIの一部はこれまでアリババグループ内で利用されていたもので、一般向けに公開するのは今回は初めてだったようです。

アリババ社内でも初のプロジェクトということで、DAMOアカデミーの開発者も大変意欲的に取り組んでくれました。オンラインではありますが、頻繁にコミュニケーションを取っていたので開発者同士の交流は深まったと思います。

お客さまの声を取り入れながら新機能も提供予定

サービス開始前から既にPoC(Proof of Concept:概念実証)を実施している企業もあるようですね。その反応はどうだったのでしょうか?

ジョン:PoCを行ってる企業からは、画像から様々なタグ情報を抽出できる点を評価いただいています。また、社内にAIエンジニアがいない企業からは、学習にかける時間を大幅に削減できるというコメントをいただいております。

一方で、POCの課題としては、AIの判定結果が間違っていた場合の対応だと考えております。そのため「画像認識AIソリューション」の機能として、マッピングページを設けており、自社で使っている商品名の表記や間違って抽出されたタグ情報を修正できるように設計しております。今後もお客さまの意見を取り入れながら機能強化を続けていきたいと考えております。

最後に「画像認識AIソリューション」やSBクラウドのAIソリューションの今後の展開について教えてください。

ジョン:今後は「レコメンド機能」の開発も検討しております。アップロードした画像データから、スタイル、色、素材などのタグ情報を把握することで、一人ひとりの嗜好にあわせた関連商品をレコメンドする機能です。これを活用することでECサイトでの売上拡大にも貢献できると考えています。

山田:今回はECサイト向けのサービスでしたが、今後は画像認識AIを他の業界向けのソリューションにも展開していきたいと思っています。

ありがとうございました。

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