SBクラウド株式会社logo

2021年アフターコロナの中国小売トレンド まとめ買いサービス「社区団購」【山谷剛史の中国から学ぶITトレンド】



image
中国の生鮮市場(筆者撮影)


アフターコロナの中国では、「社区団購(シャチ トゥアンゴウ)」という新ジャンルのサービスが急激に注目を集めています。6月には滴滴(Didi)が「橙心優選」、7月に美団(Meituan)が「美団優選」、8月に拼多多(ピンドゥオドゥオ)が「多多買菜」、9月にアリババが「菜鳥駅站」、12月に京東(JD)が専用のサービスをローンチといった具合に、中国の主要なプレーヤーが次々と「社区団購」に参入しているのです。

 

f:id:sbc_kitano:20201224104739j:plain
美団優選(美団アプリより)

社区団購とは、社区(中国式大規模マンション)向けの団購(まとめ買いサービス)のこと。主に生鮮食品を購入することができます。商品は市場価格よりも安いことが多く、アプリから発注すると翌日、大規模マンションに購入した商品が届きます。

 

f:id:sbc_kitano:20201224113316j:plain
多多買菜(アプリより)

 

主要ネットプレイヤーが参入する社区団購が普及した背景には、中国で1月から3月にかけて感染拡大した新型コロナウイルスが関係しています。ロックダウンしている中で生鮮食品を買いに行くことすらままならない状況の中、社区の各戸が必要な生鮮食品リストを代表に渡し、代表が注文や買い出しをするケースが散見しました。これをWEBサービス化したのが社区団購の原型です。

これまでのリアル店舗にある生鮮食品は、農家からその土地の農協へ、農協から中国全土の卸売市場へ、そして卸売市場から各地域の市場やスーパーに届いたものでした。消費者は市場やスーパーで中国全土の生鮮食品を購入できましたが、住民のもとに届く頃には数回のステップを経ているのでかなり高額になってしまっていたのです。(例外的に近所の農家がトラックや市場で直売するパターンがあり、これだと結構お買い得なのですが)

一方現在の社区団購は、アプリから注文すると、サプライヤーが倉庫に商品を送り、その倉庫から直接社区の代表宛に、注文の翌日生鮮食品が配送される仕組みとなっています。そして住民は、代表のいる管理室で届いたものの中から生鮮食品を選びます。サプライヤーから倉庫、倉庫から社区まででたった2ステップしかないため、生鮮食品の低価格化を実現できたのです。

 

f:id:sbc_kitano:20201224113441j:plain
「美団優選の社区代表(団長)になって儲けよう」(美団アプリより)

2020年下半期に頻繁に話題に上がった社区団購ですが、社区団購のサービス自体は2015年からあり、スタートアップがほそぼそと行っていました。サービスの細かさなど差異はありますが、基本は現在の社区団購と同じです。新型コロナウイルス感染拡大以前に、社区団購サービスの資金調達のニュースもありましたが、多くは2019年にサービスが終了しています。

新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンの影響があったからこそ人々はニーズに気づき、ネット大手各社は社区団購に参入しました。最初にECではないシェアライドの滴滴が参入し、その後デリバリーの美団が参入、さらにECで急成長する拼多多(ピンドゥオドゥオ)が参入しました。そしてアリババや京東が参入しました。これは社区団購ができないとなると、競合他社のサービスをユーザーが心移りしてしまうリスクがあるため参入したと解釈できます。大手企業がシェアを取りにくるとなれば、大手各社がお得感を出すべく赤字覚悟のセールを行うわけで、そうすると人々は安いとばかりに社区団購を利用し始め、認知されるようになります。

では既存の店はなくなるかというと、そうではありません。社区団購は翌日配達ですが、「すぐに買いたい」「手にとって現物を見て買いたい」という人もいます。アプリを利用できない中高年はリアル店舗を利用し続けるでしょう。これまで中国で起こったシェアライドやシェアサイクル、動画サイトやECサイトなどの競争を振り返るに、お得期間は最初だけで、業界内で買収や合併の後に値段が上がってくると予想し、安い今だけ利用しようという冷静な対応をするユーザーも散見します。

ともあれ、社区団購の利用者の多さから、政府も動き出しました。政府の意見を代弁すると言われる人民日報で社区団購をよしとする記事が掲載されたほか、地方政府である北京市政府は、社区一箇所につき、社区団購の受け皿となるコンビニを設置することを推奨する意見を発表したのです。

2021年以降、中国企業大手と政府の力でどれだけネットサービスと受け皿の社区をブラッシュアップして社区団購を使いやすくできるかが、今後注目のポイントといえるでしょう。また日本で新型コロナウイルス感染拡大がさらに深刻化した際は、社区団購のように「大規模マンションや団地向けに、スマホアプリで買った食材が安く届くシステムを導入する」といった、ソリューションを用意するのもありかもしれません。

 

関連記事

筆者プロフィール

f:id:sbc_kitano:20200219152250p:plain

山谷 剛史(やまや たけし)

1976年東京生まれ。東京池袋近辺、福岡市、中国雲南省昆明育ち。フリーランスライター。
2002年より一貫して中国やアジア各国のITやトレンドについて執筆。中国IT業界記事、中国流行記事、中国製品レビュー記事を主に執筆。

主な著書に『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書)』『ゼロからはじめる 海外旅行でスマホ活用 スマートガイド』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち (ソフトバンク新書)』など

公式プロフィール:https://about.me/yamayat
Twitter:https://twitter.com/YamayaT