アリババのスマートシティ戦略「城市大脳(シティブレイン)」で今できることとは【山谷剛史の中国から学ぶITトレンド】

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城市大脳(筆者撮影)

中国の各都市では、スマートシティソリューションを積極的に導入しています。中でもメジャーなソリューションといえば、アリババが手掛けAlibaba Cloud(アリババクラウド)上で運用されているスマートシティソリューション「城市大脳(シティブレイン)」が挙げられます。

よく報じられているのが、最初に報道された杭州に導入されたシステムでしょう。このシステムにより、救急車など緊急車両が通るときは、信号が緊急車両にあわせて対応することで、たとえば患者をできるだけ早く病院に運搬することができるようになりました。また杭州の中心部において、道路上に設置されたネットワークカメラの映像より車の流れを把握し、信号が切り替わる時間を調整することで慢性的な渋滞の問題を解決したり、容疑者が逃亡した場合に最も近い警察署に連絡が自動で指示を出したり、といったことも可能になりました。

 

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事故や渋滞の検出とスマートな対応を可能に(https://damo.alibaba.com/labs/city-brainより)

杭州の最初のシステムを城市大脳1.0とするならば、城市大脳2.0はさらに多くの部署と連携し、各部署のデータを共有し部門をまたいで活用していくものに進化しました。たとえばあるビルで火災が発生したときに、城市大脳が火災発生地点と周囲の交通状況を分析し、最もアクセスに時間がかからない消防署・警察署・病院に自動で指示を出すというものです。

アリババは2020年6月、城市大脳2.0よりもさらに多元化し、都市の様々な問題への感知力を向上させた城市大脳3.0を発表しました。アリババグループの副総裁で、アリババ数字政府事業部の許詩軍総裁によれば、城市大脳3.0は、公共交通、建築物、農地など全部の都市要素をカバーし、さらに交通、応急、老人対策、公共サービスなどの様々なシーンでの解決手段を提示するものとしています。

12月20日には、河南省省都の鄭州市で、導入された城市大脳3.0の発表会が行われました。多数のスマートな解決手段が導入されたとしていますが、最も多くのメディアが紹介したのが、アップグレードした救急搬送などの医療ソリューションです。

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鄭州(筆者撮影)

市民が対応アプリの緊急事態ボタンをタップすると、城市大脳が居場所と身分証番号が確認し、個人データから過去の病歴をチェックします。さらに病院へのアクセスや、各病院の得意分野から総合的にベストの病院を選択し、救急車にシステム対応済みのどの病院に搬送するのかを指示します。救急車内にいる間も、搬送中に心電図など患者の状況を確認し、患者データを搬送先の病院に転送し、病院に到着したら即治療のステップへと入ることができます。こうした積み重ねにより、救急時の対応時間を大幅に短縮し、治癒率を大幅に高めるというものです。また医療向けソリューションでは、数十の市級病院、県級病院でデータや支払を共有することが可能になりました。

次に多く紹介されたのが、中国の都市問題のひとつでもある駐車場問題を解決するソリューションです。中国では日本のようにわかりやすい場所に駐車場がなく、どこに停めていいのかがわかりにくいのです。したがって、目的地周囲の駐車場を探す車の動きにより渋滞が発生してしまいがち。そこで城市大脳3.0では、200万箇所近くの駐車スペースをシステムで把握し、どこが空いているかをナビゲーションします。ひとつのシステムが管理することで、駐車料金を標準化し明朗会計にでき、支払いはキャッシュレスで行えるようになるとしています。

次に、建物のソリューションをひとつご紹介します。中国の都市部では、エレベーターが必要不可欠な高層マンションが数多く建ち並んでいます。城市大脳では、これらのエレベーターを管理しているのです。この結果、エレベーターが止まるなど問題が発生した際、城市大脳に通知が届き、最短時間で救援作業が行われるように通達するようになりました。 

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エレベーターで万が一止まっても安心の社会に(筆者撮影)

 

さらに、環境に関するソリューションもあります。大気汚染対策として、工事現場や食堂やセントラルヒーティングからの観測データから汚染源を地図上に表示し、管理部門に自動的に連絡します。たとえば城市大脳が許容する数値を超える大気汚染値が測定された場合、測定値の地域周辺の汚染源を自動検測し、自動で担当者に連絡されます。担当者が対応すると、城市大脳にフィードバックが反映されます。水害対策として、天気予報からどの地域で水害が発生するかを予知し、災害時に救援プランを作成し、関連政府部署に通達します。

鄭州に導入されたスマートシティ「城市大脳」を基準に、2021年はさらに上回る機能のスマートシティソリューションが中国各地で誕生するでしょう。

 

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筆者プロフィール

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山谷 剛史(やまや たけし)

1976年東京生まれ。東京池袋近辺、福岡市、中国雲南省昆明育ち。フリーランスライター。
2002年より一貫して中国やアジア各国のITやトレンドについて執筆。中国IT業界記事、中国流行記事、中国製品レビュー記事を主に執筆。

主な著書に『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書)』『ゼロからはじめる 海外旅行でスマホ活用 スマートガイド』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち (ソフトバンク新書)』など

公式プロフィール:https://about.me/yamayat
Twitter:https://twitter.com/YamayaT