【山谷剛史の中国ITニュースまとめ 2020年1-2月】海賊版配信「字幕組」逮捕/中国のネット利用者10億人目前

中国アジアITライター・山谷剛史さんが、中国国内で話題になったITニュースをピックアップする連載企画です。今回は、2021年1月~2月の中国主要インターネットニュースについてまとめました。

前回のニュースまとめはこちらをご覧ください。

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字幕付き海賊版動画の配信グループ「人人影視字幕組」を逮捕

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人人影視 http://www.yyets.vip/

海外の海賊版動画に字幕をつけて配信するグループ「字幕組」のひとつ「人人影視字幕組」のグループ14人が1月上旬に逮捕され、スマートフォン20台とパソコン、サーバー12台が押収された。サービスは逮捕とともに停止となった。

捜査を行った上海警察によると、逮捕された14人は山東省や湖北省にいて、中国国内でサーバーを分散させ海賊版動画を配信していた。同サイトは2万超の作品が登録されていて、登録会員は800万人超で、海賊版配信により1600万元の不法所得があったとしている。

字幕組は人人影視字幕組に限らず「あくまで翻訳愛好者が動画を翻訳し、翻訳の成果を動画としてアップしたもの」を建前に海賊版を配信するもので、人人影視字幕組では、1作品につき400元で翻訳させていた。この中には、日本の番組や映画の翻訳も含まれる。

春節の「旅行せずその場で年越し」のコロナ対策のため、お金やデータ通信量を配布

2021年の春節は、人々が移動して新型コロナウイルスの感染拡大を行わないよう、帰郷せずその場で年越しをする「就地過年」を訴えた(必ずしも禁止するわけではない)。そこで各省・各市はその地域から離れない労働者に対し、紅包という形で現金や電子クーポンを配布した。また地域によっては電信会社各社と提携して、その場に残る労働者に対し、10GB~数十GBのデータ通信量を無料でプレゼントした。

春節といえば、中国版紅白歌合戦こと「春節聯歓晩会(春晩)」の番組でのお年玉プレゼント企画が毎年人気。今年はこのお年玉企画の提携会社がpingduoduoからバイトダンスに代わり、同社の決済サービス「抖音支付」を利用して約12億元分がキャッシュレスでばらまかれた。抖音支付は1月中旬より、中国向けTikTok「ドウイン(抖音)」に実装されている。抖音支付を使ってドウインへの投げ銭や有料コンテンツや商品購入などが可能になるだろう。

中国のインターネット利用者、10億人が目前に

目的別インターネット利用者(出典:CNNIC)
目的別インターネット利用者(出典:CNNIC)

CNNIC(中国インターネット情報センター)から、2020年末までの中国インターネット利用データをまとめた事実上の中国公式統計「第47次中国互聯網絡発展状況統計報告」が発表された。これによると、中国のインターネットユーザーは9億8900万人で、普及率は70.4%。都市部の普及率は、76.4%となった。

新型コロナウイルス感染拡大以降、利用者が伸びた各利用用途については、以下のようになる。

・EC:7億8241万人(ネット利用者の利用率は79.1%。以下同) ・キャッシュレス:8億5434万人(86.4%) ・デリバリー:4億1883万人(42.3%) ・オンライン教育:3億4171万人(34.6%) ・ライブストリーム:6億1685万人(59.8%) ・オンライン医療:2億1480万人(21.7%) ・リモートオフィス:3億4560万人(34.9%)

前回調査6月末と比べて、EC関連が10%以上、数千万人単位で増えた一方で、オンライン教育やオンライン医療は新型コロナウイルス感染拡大のリスクから脱したことから、数千万人単位で大幅に利用者は減少した。

その他の詳細はCCINICのWebサイトにてレポートがPDFで公開されている。

バイドゥ、吉利と車メーカーを立ち上げ

自動運転やAIに力を入れているバイドゥは1月中旬、自動車メーカーのGeely Auto(吉利汽車)と提携して電気自動車(EV)メーカーを立ち上げることを発表した。また3月には両社の合資会社「集度」を設立、またUber中国の管理職だった羅崗氏を招き入れた。

バイドゥは自動運転事業においては、同社の自動運転プラットフォーム「Apollo」搭載車の試験走行距離が中国企業では抜きんでて長く、北京、上海、広州、長沙など中国全土で各地地方政府と提携して試験を積極的に行っている。

インド政府、バイドゥ・TikTok・WeChatを含む中国の59アプリを永久禁止措置に

インドのスマホ統計(出典:IDC)
インドのスマホ統計(出典:IDC)

インド政府は1月末、昨年6月に一度は”禁止”を発表した中国の59のアプリをセキュリティ上の懸念から永久禁止措置とすると発表した。これにはアリババ(阿里巴巴)のブラウザー「UC Browser」、テンセント(騰訊)の「WeChat」「QQ International」、バイトダンス(字節跳動)の「Tik Tok」、そのライバルの快手の「Kuai」、バイドゥ(百度)の「Baidu Tlanslate」、微博こと「Weibo」、ECの「Shein」などが含まれる。

6月に一度禁止措置を発表し今回再度発表したのは、「当初の発表後、各社からの説明や改善を待っていた」ため。昨年9月にはテンセントのPUBGを含む中国の人気ゲームタイトル118タイトルの禁止を発表している。今回の発表の後、バイトダンスはインドのTikTokスタッフについて2000人解雇したと報じられた。インドではTikTokの利用者が1億人以上いるため、影響は大きい。

中印関係の悪化に伴い、中国製品不買の反中デモも起きたが、スマートフォン出荷台数については好調だ。IDCが2月発表した2020年のスマートフォン出荷台数統計によると、シャオミ(小米)がトップシェアで27%、2位以下がサムスン(20%)、vivo(18%)、realme(13%)、OPPO(11%)、その他が11%となっている。

中国ネット業界でも過重労働が話題に。労働者を保護する動きが出てくるかも?

新華社は「命を金に換えるのはやめよう」と呼びかける
新華社(中国の国営通信社)は「命を金に換えるのはやめよう」と呼びかける

1月上旬、北京で勤務するフードデリバリー「eleme(餓了麼)」の43歳デリバリースタッフが配送中に急死した。これにelemeが人道主義として2000元、保険会社が3万元払ったが、人命が(日本円に換算すると)50万円程度で安すぎとネット論壇で批判が噴出し、elemeは60万元支払うことに。1月中旬には江蘇省で47歳のデリバリースタッフが「5000元給料を差し引かれた」ことを理由に、焼身自殺を図る事件も。

また12月末には大手ECサービスの1月にはPinduoduo(拼多多)のスタッフが突然過労死した事件、1月上旬には同じくPinduoduoのスタッフが飛び降り自殺を図った事件が話題に。3月に同社トップの黄崢氏が辞任した(その影響があるかどうかは不明)。

後日国の代弁者であり影響力のある新華社は異常なまでの勤務体制を批判。今後中国のネット産業を支える人々を保護する法体制ができていくかもしれない。

貨物版Uber「貨拉拉」、中国政府から注意を受け録音設備やドライブレコーダーなどを搭載

貨拉拉
貨拉拉

2月上旬、中国で広く普及する貨物版の配車サービス「貨拉拉」でドライバーと乗客の若い女性の間でトラブルが発生し、女性が車から飛び降り死亡した事件が話題になった。ドライバーが顧客の荷物と女性を載せて走り出したのち、オーダーをキャンセルして異なるルートを走り出したことで女性は抗議をするも走るのを止めなかったので危険を察して飛び降りた結果だった。貨拉拉は、過失を認め謝罪した。

この事件に対し、政府交通運輸部は安全対策をするよう貨拉拉に注意。3月中旬には貨拉拉は、すべての営業車に録音設備やドライブレコーダーや監視カメラを搭載し、貨物を運び終わってから最低7日間はデータを保持するという対策を発表した。

かつてDidiでもドライバーと若い女性客の間でトラブルが発生し乗客が殺害される事件があり、Didiは事件発生を未然に防ぐために今回の貨拉拉以上の様々な対策を行っている。

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筆者プロフィール

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山谷 剛史(やまや たけし)

1976年東京生まれ。東京池袋近辺、福岡市、中国雲南省昆明育ち。フリーランスライター。
2002年より一貫して中国やアジア各国のITやトレンドについて執筆。中国IT業界記事、中国流行記事、中国製品レビュー記事を主に執筆。

主な著書に『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書)』『ゼロからはじめる 海外旅行でスマホ活用 スマートガイド』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち (ソフトバンク新書)』など

公式プロフィール:https://about.me/yamayat
Twitter:https://twitter.com/YamayaT