コロナ禍の中国でマスクを届けるテクノロジーあれこれ(山谷剛史の中国から学ぶITトレンド)

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 日本ではまだまだマスクは必要でありながら、その入手は難しい状況です。中国でも争奪戦になっていますが、誰にでも少しは行きわたるような販売方法を行う業者もいます。

 中国はもともとPM2.5による公害対策で大量にマスクを生産している国ではありますが、日本同様、どこでもすぐに手に入るわけではありません。淘宝網(Taobao)などで販売をしていますが、やはりマスク購入となると多くがスピード勝負です。

 一方普及こそしてませんが、マスクを確実に各家庭で買えるようなサービスもあります。日本での今後のマスク販売や配布の参考に、いくつか中国での事例を紹介していきます。

 

マスクを扱う自動販売機で「非接触」を実現


 まず一つは自動販売機による販売です。中国でもマスクを扱う自動販売機が登場しました。

 本来は飲料やお菓子を販売していたものにマスクを入れ、販売しています。従来の自動販売機は、QRコードによる支払いに対応し、ボタンを押さず、ミニアプリから購入するものが一般的です。つまり微信(WeChat)や支付宝(Alipay)で自動販売機に表示されたQRコードをかざすと、スマホの画面は自動販売機の注文画面に移行し、そこから商品を選択し支払うと、自動販売機がそれに合わせて商品を受け取り口に落とすというものです。

 エレベーターもしかり、不特定多数が触るボタンは感染の温床となりがちですが、QRコードからのミニアプリによる販売であればボタンを押す必要はないので、受け取り口以外は「非接触」を実現できます。受け取り口さえ接触しないような工夫ができれば、完全非接触はできそうです。

 

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マスク販売専用に絞った自販機も登場。QRによる非接触を謳うが、取り口は接触してしまう(天津日報より)

 

身分証確認でマスクを販売

 

 とはいえ普通のスマホ対応の飲料や食料品を販売する自販機をマスク対応にしただけでは、24時間いつでも買える反面、買い占めが起きてしまう。そこで江蘇省徐州では、主にVRゲーム機などを開発する地元企業「徐州拓普互動智能科技」が開発した、ICカードの身分証を活用した自動販売機が登場しました。身分証カードをかざすことにより、2枚までN95のマスク購入ができるというもので、3月2日に運用を開始して4日で4000個弱売れたそうです。動画でも報じられていますが、非接触型ICカードを活用する以上、利用する市民は”タッチ”してしまうのが不安要素になるでしょう。

 

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身分証をかざしたあとにマスクが買える自販機(中新網より)

 自動販売機ではなく、身分証を確認してマスクを販売する店舗については、中国全土で多数確認できます。店員が目視で身分証を確認しメモを取り、ひとつの番号につき何個までマスクや消毒液を販売するというものです。その隙間を利用するように、他人の身分証を利用して買い占めるというニュースもありました。

 

アプリでの予約販売も


 自動販売機以外のマスクを弱者にも販売できる手段として、アプリによる予約販売もあります。ECサイトだけでなく、各地方政府が予約バウチャーの販売を行い、市内の数十店舗の薬局でバウチャーをもとにマスクを手渡すという手法もあります。たとえばテンセントの微博(WeChat)では、ライバルのアリババのECサイトを含む各ECサイトで、何時に販売が開始されるといった情報を紹介しています。

 

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ミニプログラム「微信看点」では地域別のマスク販売開始情報が表示される

 

 各地域の地方政府も動いています。市民向けサービスの支払いも可能なアリババ系の「支付宝(Alipay)」やテンセントの「微信(WeChat)」ほか、「本地宝」が提供するアプリをはじめとした各地方政府の市民向けサービスを提供するアプリで、マスクの予約サービスを提供しています。ここで出てきた「本地宝」というサービスは地域特化型の政府系ポータルサービスで、アプリとしては「我的南京」「我的天津」「我的鄭州」など一部の都市向けにリリースされています。

 

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アプリ「我的南京」でのマスク予約


 マスクの予約購入にはECサイトの購入、政務生活サービス系アプリからの予約購入を問わず、携帯電話番号による実名認証が必要なのには変わりません。多くのところで、一人が一度につき「最大10個しかマスクが買えない」といったコントロールや、同じ人が重複して偏って買わないように、一度予約が成功したらその人は数日予約ができない、といったコントロールがされています。何日予約を空けなければいけないかについてはばらつきありますが、毎日の入荷数と、周辺人口から算出していると思われます。

 翻って日本では、中国のように役所がそれぞれスマートフォン向けアプリを提供しているわけではないですが、WEBサイトは用意されています。支付宝や微信からの政務生活サービスの利用はキャッシュレス機能に加えて政府との連携があってこそ実現されるもので、中国を真似するといっても準備には時間がかかると思います。既存の企業や役所がWEBサイトからマスク予約販売を率先して構築すると、多くの住民に均等にマスクを与えられるのではないでしょうか。

筆者プロフィール

 

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山谷 剛史(やまや たけし)

1976年東京生まれ。東京池袋近辺、福岡市、中国雲南省昆明育ち。フリーランスライター。
2002年より一貫して中国やアジア各国のITやトレンドについて執筆。中国IT業界記事、中国流行記事、中国製品レビュー記事を主に執筆。

主な著書に『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書)』『ゼロからはじめる 海外旅行でスマホ活用 スマートガイド』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち (ソフトバンク新書)』など

公式プロフィール:https://about.me/yamayat
Twitter:https://twitter.com/YamayaT

 

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