「アリババはデジタルエコノミーのインフラを構築する」アリババ張勇CEO、張建鋒CTO講演レポート(Apsara Conference 2019)

9月25日〜27日、Alibaba Cloudの年次イベント「2019年杭州・云栖大会(Apsara Conference 2019)」が開催された。今回はサミットを中心に、特にアリババグループのキーパーソンの基調講演にフォーカスして、レポートを届けたい。

 

アリババグループ会長兼CEO、張 勇(ダニエル・チャン)「アリババは、ビジネスオペレーションシステムを提供する」

9月10日にジャック・マーがアリババグループ会長を退任したため、やはり今回のカンファレンスには姿を現さなかったが、現アリババグループ会長兼CEOの張勇(ダニエル・チャン/Dan5el Zhang)が登場し、「デジタルエコノミー時代」をテーマとした基調講演を行った。

ジャック・マーは2016年に開催されたこのカンファレンスで(当時は The Computing Conferenceという名称)「五新」という言葉を提唱している。

<五新>
・新零售(新小売、ニューリテール)
・新金融(ニューファイナンス)
・新能源(ニューエネルギー)
・新技術(ニューテクノロジー)
・新制造(新製造、ニューマニュファクチュアリング)

ダニエル・チャンは、その五新について、「その本質は数(データ)と智(インテリジェンス)がエンジンになっている。」と解説した。

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「いま、社会全体はデジタルエコノミー時代に入り、五つの業界だけではなく、様々な業界においてデータとインテリジェンスがエンジンになっており、『五新』ではなく、『百新』へと進んでいる。つまりは全てのビジネス、および社会全体においてもデータとインテリジェンスが重要になっている」とチャン氏は語る。

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「中国の巨大な消費市場も変わりつつある中で、消費行為のデータは検知、収集、分析されるため、供給側も変革してきた。消費者の新しい需要は、データインテリジェンスを元にした新しい供給を作り出している」。

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「アリババは『あらゆるビジネスの可能性を広げる力になる(To make it easy to do business anywhere)』といったミッションを掲げ、この20年間で、EC(電子商取引)、金融、物流、クラウドなどデジタル時代のインフラを構築してきた。これらのインフラを『ビジネスオペレーションシステム』と称し、全ての企業のデータ化、インテリジェンス化を支援していく」。

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「デジタルエコノミー時代では、ビッグデータは石油、コンピューティング能力はエンジンとして働いている。データの爆発的な増加に伴い、コンピューティング能力は、コンピューティングの規模と効率を支えるほか、コンピューティングのクオリティとインテリジェンスを高める必要がある。この『データインテリジェンス時代』では、文字通り『データ』と『インテリジェンス』の融合が求められており、それによりコンピューティング能力が更に大きく発展していくだろう」と締めくくった。

 

アリババグループCTO、張建鋒(ジェフ・チャン)「アリババは、デジタルエコノミーのインフラを構築する」

続いて、アリババグループCTOの張建鋒(ジェフ・チャン/Jeff Zhang)が登壇し、「デジタルエコノミー時代のインフラ構築」をテーマとした基調講演を行った。 主な内容は次の通り。

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「デジタルエコノミー時代では、デジタルトランスフォーメーションを実現するために四つのキーテクノロジーが挙げられる。つまり、信頼でき、使いやすいクラウド、インテリジェンスを持つビッグデータ、クラウド&エンドの両方をカバーするインテリジェントネットワーク、いつでもどこでも利用可能なモバイルコラボレーションといったものだ」。

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「アリババは様々な領域でデジタルトランスフォーメーションを進めてきている。アリババ自身も一つのデジタルエコノミーとして、ビジネスオペレーションシステムを提供しており、デジタルトランスフォーメーションのリーダーであるとともに、イノベーターでもある。アリババは、アリババクラウドが長年に蓄積したノウハウ・プロダクト・システムを外部に提供していく」。

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「APSARAシステムは、アリババが開発したクラウドオペレーションシステムとしてAlibaba Cloudの中核であり、10万台規模のサーバーを統一的に管理する能力を持っている。これはアリババが自主開発したもので、中国のクラウド時代を開いてきたのだ」。

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2年前に設立された達摩院(Alibaba DAMO Academy)は、マシンインテリジェンス・ブロックチェーン・量子コンピューティング・自動運転の四つのラボを持っており、それぞれの領域で大きな進展を遂げた。

アリババは、ビッグデータ、人工知能、IoTなどを含めたソフトウェア&ハードウェアを一体化することにより、クラウドプロバイダーからクラウドのインテリジェンスプロバイダーへ変貌しつつある。

これからの10年間は、デジタルトランスフォーメーションにとって重要な時期であり、アリババクラウドのデータインテリジェンスがデジタルエコノミー時代にとって重要な時期でもある。今後もアリババの更なる成長が期待される。

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張氏は、アリババの半導体会社T-Head(中国語名:平頭哥)によって初めて開発された推論用チップ「含光(HanGuang)800」を発表した。業界屈指の性能を持っているという。

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T-Headは、2018年10月に設立され、クラウドとエッジの両方のチップ設計の革新をけん引しており、エッジからクラウドコンピューティングまで包括するエコシステムを育成している。今回発表された「含光800」は、Alibaba Cloudで利用できるようになっている。

 

アントファイナンシャルグループCEO 胡暁明(サイモン・フー)「テクノロジーが金融の最大の変数」

アントファイナンシャルグループCEO胡暁明(サイモン・フー/Simon Hu)は、「デジタルエコノミー時代のフィンテック」をテーマとした基調講演を行なった。主な内容は次の通り。

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「今の時代、テクノロジーは、金融をオフラインからオンラインへシフトさせている渦中であるが、その背景には、データに対するコンピューティング能力が高まってきたことにより、イノベーションが起こってきたといえる。 例えば、グラフィックマシンラーニング、クラウドコンピューティング、モノのインターネット、および量子コンピューティングなどのテクノロジーが挙げられる。」

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「テクノロジーは、金融サービスのあり方を大きく変えている。モバイルペイメント、クレジットレーティング、グローバルペイメント、Mutual-aidプラン、デジタルカレンシーなどはすべてテクノロジーによるイノベーションだ。」

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 「フィンテックは、デジタルエコノミー時代の最も重要なチャンスである。フィンテックは、データインテリジェンス、セキュリティ&リスクコントロール、ブロックチェーン、バイオメトリックス、プライバシー保護などのテクノロジーに支えられており、今、アントファイナンシャルの技術で、バーチャルの世界とリアルの世界が融合できるようになってきている。」」

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「データとテクノロジーで金融の世界をこれからさらに大きな変革をさせていく。未来の金融センターは、テクノロジーセンターでもあり、テクノロジーのイノベーションは、金融のイノベーションでもあると認識するべきだ」

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「DAMO Academy(達摩院)」のイノベーター育成

今回のカンファレンスでは、130超のサミットや分科会が行われ、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、人工知能、モノのインターネットなど多彩多様なテーマで盛り上がった。

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その中で注目したのは、アリババグループの基礎研究部門である「達摩院(DAMO)」が主催する「達摩院⻘橙賞(DAMO Academy Young Fellow)」の授賞式だ。

⻘橙賞は、DAMO(達摩院)により2018年に設立され、ハイテク基礎研究領域において35歳未満または博士号取得6年未満の⻘年科学者に1人当たり100万人⺠元(約1500万円)の奨励金を提供している。 また、アリババ従業員と同じくアリババの世界中の研究施設を活用でき、達摩院の技術リソースを提供している。

今年は、清華大学、北京大学などの10人の技術者が授賞し、量子コンピューティング、数学、光通信、機械学習など先端技術領域の研究開発を支援し、次なる若手のイノベーターたちの育成にも力を入れている。

以上、APSARAカンファレンスは中国インターネット業界で最も注目されるイベントであり、アリババグループから発信される様々な最新情報が、中国インターネット業界の羅針盤として活用されるのは間違いない。

ジャック・マー氏退任後の今回のアリババグループの新たな発表がどれほど影響をもたらしていくのか、引き続き注視していきたい。

 

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唐 徳権 とう とくけん

唐 徳権 (とう とくけん)

イーパオディング株式会社代表取締役社長
北京璞華ロボット情報技術有限公司Founder &CEO

中国におけるロボット及び人工知能事業、日中間のビジネスコンサルティングに従事。ロボットや人工知能についての情報発信も積極的に行っている。日経クロストレンドでは「中国デジタル革命の深層」という連載を執筆中