スマート農業事例:海昇集団がAlibaba Cloud「農業大脳」の導入で約3億円のコスト削減に成功

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野菜・果物栽培など農業ビジネスを手掛ける大手企業「海昇集団」をご存知でしょうか。1996年に誕生した農業分野ではトップクラスの企業で、今回紹介するクラウド導入によるスマート化以前から、機械化やハイテク化に積極的に取り組んでいました。

そしてAlibaba Cloudには、スマートシティ向けのソリューション「城市大脳(City Brain、シティブレイン)」や、スマート工業用ソリューション「工業大脳(Industrial Brain)」の他にも、農業向けクラウドソリューション「農業大脳(Agricultural Brain)」があります。

実は海昇集団は、Alibaba Cloudと農業ソリューションで提携した最初の企業なのです。農業大脳を導入したことで、年間で1畝(15分の1ヘクタール)あたりのコストが200元減らすことができました。トータルで2,000万元(約3.2億円)のコストカットに成功したと言われています。

海昇集団の農業ソリューションには、クラウドとビッグデータ、AI、それにIoTなどが活用されています。それでは農業にクラウドやビックデータなどがどのように活用されているのか、具体的に見ていきましょう。

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農業ビジネス大手「海昇集団」

海昇集団は2019年11月の時点で、中国全土63カ所8万畝という広大な土地で栽培を進めています。この広大な土地のデータを、海昇集団はどのように管理しているのでしょうか。

これまで同社のデータ管理は、Excelで行われていました。もともと同社にはExcel管理が上手な社員がいたのですが、Excel管理の欠点として、入力ミスやデータの損失がしやすく、データ入力作業でスタッフに負担をかけてしまう問題がありました。

やがて事業規模拡大とともに必要なデータが増え、Excelのフォーマットが異なるという状況に陥ることに。Alibaba Cloudを新たに導入する直前には、20の表計算シートが連携されていたそうです。

これではパソコンのリソースもかなり消費しますし、処理速度も遅くなってしまうでしょう。

スタッフ削減など各種コストダウンを実現 (出典 https://developer.aliyun.com/article/620557)
スタッフ削減など各種コストダウンを実現 (出典 https://developer.aliyun.com/article/620557

またExcelのシートもどんどん増えた結果、欲しいデータを見つけ出し、整理・分析することが非常に難しくなりました。同社創立から20年以上が経ち、もはや「各農作物に対してどう改善していくか」を既存のExcelシートで対応するのは不可能な状況になっていました。

さらに事業拡大に加え、農業で使えるネットワークカメラや各種センサーが市場に登場し、農機も充実してきました。「いよいよExcelではどうにもならない」と判断した海昇集団は、システムのスマート化を決断し、Alibaba Cloudと提携することを決めたのです。

Alibaba Cloudの専門家は、海昇集団と話し合いながら必要なデータを洗い出し、農業ビッグデータプラットフォームのデータベースを定義し、Alibaba Cloudでシステムの再構築を行いました。

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「農業大脳(Agriculture Brain)」の管理画面(出典 https://developer.aliyun.com/article/620557

その結果、各収穫物の成長データに加え、ネットワークカメラや気象チェッカー、土壌チェッカー、監視カメラ、農機、ドローンなどのデータも、収集、処理、蓄積し、長期的視点で分析できるようになったのです。

加えて、天候に対応することも可能に。気象データから農場の15日後までの気温、風向き、降雨、湿度を過去のその場所の気象データから予測できるようになったのです。

このスマート化により、各農地で決まったエリアでの果樹を管理し、害虫被害や天候被害などをチェックするスタッフを減らすことになりました。無人化工場のようなことが、中国のスマート農場でも起きているわけです。

また海昇集団は中国全土に展開する大企業なので、どうしても提供される肥料も地域によって異なり、統一するのは難しい状況でした。従来ならば、各地域の経験豊かな農家がいろいろ試行錯誤しながら最適な栽培方法を身につけるところです。

Alibaba Cloudの「農業大脳1.0」。現在はバージョンが更新されている
Alibaba Cloudの「農業大脳1.0」。現在はバージョンが更新されている(出典:https://developer.aliyun.com/article/620557

そこを海昇集団とAlibaba Cloudは、各地域で各種肥料を分析し、栽培したい果樹に適した肥料の投入量を調整して自動散布するというスマートな手法をとりました。

異なる土地で水も土壌も異なる中で、データベースをチェックしながら最適な果樹への水、肥料、農薬の量を散布し、その散布量をリアルタイムに記録するようになったのです。

その結果、これまでの果樹園よりも密度を4倍、土地や水を6割減、肥料を7割減らすことができるように。さらに1畝あたりのコストを200元カットできたため、トータルで2,000万元のコストカットができたというわけです。

以上が、Alibaba Cloudの「農業大脳」のソリューションの活用事例です。

加えてアリババの得意分野といえば、ECと物流。収穫した果物をQRコードで管理し、同社の物流「菜鳥」で運び、同社のニューリテールスーパー「盒馬鮮生」で販売し、QRコードで生産から販売までトラッキングする、安全への取り組みも行っているのです。

このようにAlibaba Cloudは、海昇集団を通して初めて農業大脳導入に取り組んだ結果、成功を収めました。今後より多くの農業企業に取り組んでいくでしょう。またECでライバル企業である京東なども、農業のスマート化に取り組んでいます。

中国の農業の現場は今も進化し続けています。さらに気がついた頃には、いつの間にか驚くほどスマート化が進んでいるかもしれませんね。

 

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筆者プロフィール

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山谷 剛史(やまや たけし)

1976年東京生まれ。東京池袋近辺、福岡市、中国雲南省昆明育ち。フリーランスライター。
2002年より一貫して中国やアジア各国のITやトレンドについて執筆。中国IT業界記事、中国流行記事、中国製品レビュー記事を主に執筆。

主な著書に『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書)』『ゼロからはじめる 海外旅行でスマホ活用 スマートガイド』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち (ソフトバンク新書)』など

公式プロフィール:https://about.me/yamayat
Twitter:https://twitter.com/YamayaT