本のニューリテールを実現する「新華書店」のDX化手法

近年、中国各地でまるでファンタジー世界のような書店が登場し、開店するたび話題を呼んでいます。一方で新華書店という書店チェーンは中国の大都市から小都市まで沿岸部内陸部を問わずおよそ12,000店を展開しています。新しい書店が続々と開店するなか、老舗の新華書店はDX化を行い、中国の本屋のあり方を変えようとしています。

Alibaba Cloudと新華書店の提携発表(出典:阿里雲開発者社区)
Alibaba Cloudと新華書店の提携発表(出典:阿里雲開発者社区

2017年に新華書店は、Alibaba Cloudと提携し、DX化を行うことを発表しました。当時の背景として、アリババが提唱したニューリテールスーパー「盒馬鮮生」を起爆剤としたニューリテールブームがありました。当時ニューリテールをアピールしていた店舗は概ね「店舗もあるがオンラインでも買える」「無人レジで購入できる」「各商品ごとの値段タグに表示されたバーコードやQRコードで生産情報が読める」「店にいくと楽しめるハイテクな仕掛けがある」という特徴があり、いずれも話題になったのです。

新華書店でもまた、まず一部店舗で「ニューリテール化」と称し、店舗改造を行いました。たとえば、本をまとめて置くだけで支払う値段がわかる無人レジや、顔認証すると購入履歴からオススメの本が紹介される案内端末が用意されたのです。またQRコードやバーコードが表示されたタグをスキャンすると、オンラインショップの該当の商品のページが表示されるようになりました。

新華書店のスマート店舗テクノロジー(出典:阿里雲開発者社区)
新華書店のスマート店舗テクノロジー(出典:阿里雲開発者社区

さらに、新華書店は出版関係企業と図書館とのデータ連携を発表し、図書カードを利用して本を借りられるようにすることを目指しています。実際に雲南省昆明市では雲南省図書館と連携し、図書館で在庫がない本を昆明市の新華書店で借りられるというシステムがスタートしました。100元以内のハウツー本か学習系の本で、雲南省図書館に蔵書がない場合に限り、昆明の新華書店の一部店舗で借りることができるようになったのです。

新華書店昆明店(著者撮影)
新華書店昆明店(著者撮影)

また新華書店では、書店の購入データや図書館で借りた時のデータを連携し、利用者や購入・レンタルデータから人気の本の傾向を分析、マーケティングに活用するとも発表。各地の書店で人気の出そうな本を前面に積んだり、オンラインサイトで実店舗の購入履歴に合わせた広告を表示することが考えられます。

また各書店の在庫を統一して見える化することにより、在庫を抱えすぎることなく、店舗に在庫がない場合やオンラインショッピングの配送時には最適なルーティングを行い、在庫管理において最適なパフォーマンスを実現するとのこと。生鮮食品のニューリテールにおいて、各店舗を倉庫代わりにする「前置倉」という概念がありますが、本でも同様のことを行うわけです。

新華書店昆明店(著者撮影)

新華書店昆明店(著者撮影)

さらに2019年以降、中国各地で「城市書房」という施設が続々とオープンしています。城市書房は図書館と同じく本が並べられ自由に読んだり借りたりできるほか、自習室として使うこともできる施設。夕方には閉まる図書館は異なり、夜遅くか24時間オープンしているのが特徴です。新華書店とAlibaba Cloudのニュースによれば、今後この城市書房も活用するとのこと。ニーズに合わせて最適な本を配置することが予想されます。

2020年2月に国家新聞出版署は、2023年までの新華書店の教科目標「国家新聞出版署関于加強新華書店網絡発行能力建設的通知」を発表しました。これは「クラウドやビッグデータやIoTやAIを活用し、全国統一の新華書店ネットワークプラットフォームを構築するとともに、出版社や図書館などともデータ連携を進める。またネット小説やオーディオブックなどの新しい流行については良質なコンテンツも取り込み、次代のニーズに合わせた運営を行う」というものです。

たとえば、ネット小説やオーディオブックといったデジタルコンテンツをも含めて、いろんな場所で利用者の利用履歴を分析します。その分析データを、オンラインプラットフォームやオフラインの書店や図書館などに反映するわけです。たとえば電子ブックリーダーを提供しているカフェで、飲み物をオーダーするとともに電子ブックリーダーをレンタルするとします。すると本人の履歴にあった本が推薦される、あるいはカフェに来店予約すると本を準備してくれる……中国メディアは、そのような未来予想図を描いています。

新華書店は都市全体レベルでの書店のDX化によって、ユーザーエクスペリエンスと書店や図書館の効率を向上し、ひいては市民の本の敷居を下げることを目指しているのです。

 

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筆者プロフィール

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山谷 剛史(やまや たけし)

1976年東京生まれ。東京池袋近辺、福岡市、中国雲南省昆明育ち。フリーランスライター。
2002年より一貫して中国やアジア各国のITやトレンドについて執筆。中国IT業界記事、中国流行記事、中国製品レビュー記事を主に執筆。

主な著書に『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書)』『ゼロからはじめる 海外旅行でスマホ活用 スマートガイド』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち (ソフトバンク新書)』など

公式プロフィール:https://about.me/yamayat
Twitter:https://twitter.com/Yamaya