【中国製造DX事例】画像AIを品質検査に活用した太陽光パネル製造「正泰新能源」

正泰新能源
正泰新能源(https://energy.chint.com/

中国では日本と同じく、太陽光発電の建設が進んでいます。効率の良い太陽光発電を目指し、パネルなどの部品メーカー各社が切磋琢磨し研究開発を続けていて、一部企業は日本にも進出しました。近年ではIoTを活用し、センサーで異常を発見するなどの、効率のよい運用も行われています。

電気インフラ系企業グループ「正泰(Chint Group)」傘下の「正泰新能源(Chint New Energy)」は、クリーンエネルギーの開発、建設、運用、管理を統合するエネルギーソリューションプロバイダーです。太陽光発電モジュールの製造と販売を行い、中国だけにとどまらず世界でも設置を進めています。

同業他社との競合を勝ち抜くための要素のひとつとして、よい品質の製品の安定供給が挙げられます。もともと同社は自社でビッグデータやAIやクラウドを活用したMES(製造実行システム)を開発し、自動化された製造ラインを運用していました。またビッグデータを活用した品質チェックソリューションをコストが高いシリコン系単結晶の製品向けに構築し、良質な製品を量産していたのです。

一方で、コストが安いシリコン系多結晶のパネルは中のセルが複雑で、異なる結晶粒が密に詰まった製品でした。そのため、業界最高水準のアルゴリズムですら、密に詰まった結晶粒を正確に捉えることはできなかったのです。

正泰新能源の海寧工場(出典:正泰新能源公式サイト)
正泰新能源の海寧工場(出典:正泰新能源公式サイト

この非常に難しいとされる多結晶シリコンの品質チェックを、Alibaba CloudのIntelligence Brain(工業大脳)が可能にしました。正泰だけでなく、同業のGCLGroupや天合光能(TrinaSolar)もAlibaba Cloudのソリューションを採用したのです。

正泰新能源の自制のシステムも工業大脳を活用したシステムも、AIによって問題のある製品を抽出するという点では同じです。すなわち人の手作業による目視で無数の製品から問題のあるものを記憶と経験を頼りに取り出す作業を、AIを活用して行います。

AIを活用したシステムは、人間の記憶力や計算能力よりもはるかに優れており、外界に邪魔されることなく、疲れることもなく、ミリ秒単位という瞬時で判断できるのが強みです。

AIによる品質チェックシステムを実現するため、まずは人をトレーニングさせるように、AIにさまざまなケースを入力していきます。正泰新能源は過去2、3年間で収集した5万枚を超える欠陥のある製品画像をアルゴリズムサーバーにアップロードしました。

そこにはヒビ、欠けた角、黒い斑点や線、指紋の跡、様々なケースがあります。それぞれの画像について、どこに問題があるかをマークし、これらをクラウドコンピューティングプラットフォームに入力。ディープラーニングと画像処理技術を使ってアルゴリズムのトレーニングを行います。

大量のサンプルデータを入力し鍛え、実践で運用し、さらに賢く(出典:Alibaba Cloud中国サイト)
大量のサンプルデータを入力し鍛え、実践で運用し、さらに賢く(出典:Alibaba Cloud中国サイト

トレーニングの結果、AIは毎日検査が要求される製品の何万枚もの写真から製品の欠陥を発見しアラートを出しつつ、欠陥のカテゴリ、欠陥の長さ、面積、形状などを明確にアウトプットします。

さらにこのAIとクラウドを組み合わせることにより、運用されるとさらに類似した新しい問題を発見し、その結果アルゴリズム自身にフィードバックして、より正確に問題を発見することができるようになりました。正泰の場合はオンライン測定を複数回行った後、AIアルゴリズムの認識精度は97%まで向上しました。

AIアルゴリズムで発見するだけではなく、自動化システム全体では、画像の撮影からデータの受信と処理、欠陥判定のためのMESシステムへのデータのアップロード、ロボットアームによる不良品のピックアップまで実行します。

この一連の処理速度もAlibaba Cloudの採用で同じプロセスの元のシステムの半分の時間まで短縮できたとのこと。正泰新能源は、多結晶シリコンで成功したノウハウを単結晶シリコンやバッテリーモジュールにも適応し、正泰新能源の各地の各製造ラインでの品質向上を実現したとのことです。

ECサイトなどに導入できる画像検索系AI(出典:Alibaba Cloud中国サイト)

ECサイトなどに導入できる画像検索系AI(出典:Alibaba Cloud中国サイト

ちなみにAIを使った画像処理はモノづくりだけにとどまりません。新型コロナでの大量のレントゲン写真の高速画像チェックや、顔認識や、ショップ向けの販売画像からの人気商品トレンドの分析など、様々なソリューションに活用されます。

カメラでリアルなモノの写真を撮ると、ECサイトのサービスが写真に相当する商品を探し出す、そんなユーザーに優しくなる仕組みもAIならば可能ですね。

 

関連記事

www.sbcloud.co.jp

www.sbcloud.co.jp

www.sbcloud.co.jp

www.sbcloud.co.jp

関連ソリューション

www.sbcloud.co.jp

www.sbcloud.co.jp

筆者プロフィール

f:id:sbc_kitano:20200219152250p:plain

山谷 剛史(やまや たけし)

1976年東京生まれ。東京池袋近辺、福岡市、中国雲南省昆明育ち。フリーランスライター。
2002年より一貫して中国やアジア各国のITやトレンドについて執筆。中国IT業界記事、中国流行記事、中国製品レビュー記事を主に執筆。

主な著書に『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書)』『ゼロからはじめる 海外旅行でスマホ活用 スマートガイド』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち (ソフトバンク新書)』など

公式プロフィール:https://about.me/yamayat
Twitter:https://twitter.com/Yamaya