中国政府が推進する住宅地のスマート化計画と活用されるAI技術

小区内。建物がいくつもあり、1つの建物にいくつも入口がある(筆者撮影)

小区内。建物がいくつもあり、1つの建物にいくつも入口がある(筆者撮影)

今後5年以内に、中国の住宅はIoT機器やクラウドを活用してスマート化していくかもしれません。

中国政府住建部は2020年7月に「智慧城市建築及居住区建設規範」という住宅地のスマート化に関するドラフト版を発表しました。これはまだドラフト版ではありますが、最終的には、このドラフト版とそう変わらないものとなるでしょう。

中国の住宅は、そのほとんどが「社区(小区)」と呼ばれる大規模マンション団地内にあります。日本の団地と似ており、建物が何棟かとちょっとした散歩スペースがあります。また、社区の外と中をつなぐ人と車の出入り口が、1カ所~数カ所に限られているのが特徴です。社区によっては社区内に食堂や売店もありますが、社区の住民のニーズを満たせるほどではなく、新型コロナウイルス感染拡大の危機の際には、デリバリーサービスやECサイトからの商品の宅配業者が、社区の入口まできて商品の受け渡しをしていました。

その社区を改造してスマート化を推進することを目的としたのが、「智慧城市建築及居住区建設規範」です。中国式の管理社会を推し進めるべく、おそらくは全ての社区を数年の期限つきでスマート化していく予定なのでしょう。

同規範には、「公共スペースの様々な場所にカメラやセンサーなどのIoT機器を導入し、管理室のコントロールセンターで人力+AI自動管理を行う」ことも挙げられています。住民向けに社区専用アプリを用意し、社区から連絡通知を行えるようにするほか、社区の管理費の徴収ができるようにするほか、商店やサービス、そして高齢化社会に向けたインターネット利用が苦手な老人住民のための施設も設けるとしているのです。

社区内でIoT機器と言えば、防犯などに使われるネットワークカメラの導入が予定されています。ネットワークカメラについては、720ピクセル以上の高精細をはじめとした各種条件を満たす製品を、社区の出入口や各建物の出入口、社区内の主要通路に配備するとしているのです。その上で人と車の通行量についての統計機能と、不審者がいればセンターに通報する機能を備え、各種ログについて30日以上保存します。

正覚智能 http://www.zhengjue-ai.com/
正覚智能 http://www.zhengjue-ai.com/

住宅地のスマート化を行う企業「正覚智能」は、ネットワークカメラの防犯以外の機能として、子供がひとり遊びをしていたり、老人がひとりで外出したときにチェックする機能を提案しています。このように、住宅地の中にネットワークカメラがあるとメリットが様々あります。また南京のある社区では、住宅からの落下物をカメラで観測し、どこが落としたかを把握できる仕組みや、社区内で散歩する老人を見守る仕組みを導入しました。

社区の入口には、入場ゲートがあります。また各建物の入口にも門がありますが、それぞれにカード・ボタン・アプリ・顔認証など複数方式での認証方法を導入することを推奨しています。住民以外が社区に入る場合はスマートフォンアプリなどで登記をし、その際電子通行QRコードを発行することを目指します。

またネットワークカメラによりAIでナンバーを認識し、車の出入りや動きも把握。昨今の中国では駐車場不足が問題になっていますが、社区の駐車場を一時的に駐車場として貸し出す場合に、自動的に徴収できるシステムを導入することを推奨しています。

他にも、大気汚染センサー、温度湿度センサー、水質汚染センサーを用意。気候の異常があれば住民に連絡が行く仕組みとなります。

さらに、消防設備もスマート化することを推奨しています。住宅内においては、水道、ガス、電気をスマート化し水量、電気、ガス、ドアの状態から異常な家屋を判別します。また火災センサーや自動調光ライトなどスマートホーム機器導入を勧めてもいるので、社区の管理センターとつながる仕掛けもできるかもしれません。加えて、老人宅での緊急時にサポートが駆けつけられるよう、緊急ボタンの設置も挙がっています。

こうした住宅や公共スペース全体の動きのデータが蓄積されることによって、AIが不足の事態や行動を予測し、社区のコントロールセンターがそれを把握できるようにするとのことです。

Alibaba Cloud(阿里云)による小区管理プラットフォームの例

Alibaba Cloud(阿里云)による小区(社区)管理プラットフォームの例

しかし、まだドラフト版であり地域による貧富の差もあるので、どこまでが必須になるかはまだ決まっていません。とはいえECの発達により、多くの場所に新たに配達ロッカーが設置されるなど、スマート化に対応した設備が多くの住宅に入りました。規範が正式に発表されれば、さらに住宅地のクラウド管理が進んでいくでしょう。

早くもAlibaba Cloud(阿里云)を含むいくつかの企業は、ドラフト版に近い形の住宅管理クラウドシステムを発表しています。日本と中国で社会背景は異なりますが、クラウド化することで人的コストを減らしつつ、よりサービスのクオリティ向上が期待できます。今後様々な企業から出てくるであろう、住宅管理クラウドシステムに注目です。

 

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筆者プロフィール

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山谷 剛史(やまや たけし)

1976年東京生まれ。東京池袋近辺、福岡市、中国雲南省昆明育ち。フリーランスライター。
2002年より一貫して中国やアジア各国のITやトレンドについて執筆。中国IT業界記事、中国流行記事、中国製品レビュー記事を主に執筆。

主な著書に『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書)』『ゼロからはじめる 海外旅行でスマホ活用 スマートガイド』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち (ソフトバンク新書)』など

公式プロフィール:https://about.me/yamayat
Twitter:https://twitter.com/YamayaT