2019年中国のAI業界の振り返りと2020年テック業界予測





新年を迎えて早1カ月が経過しましたが、2020年1回目のコラムでは、昨年大きく動いた中国AI業界を振り返ってみたいと思います。

ぜひ、こちらを参考にして2020年の中国テック業界がどうなるのか予測してみてください!

 

2019年、中国のAI業界全体について:AI技術からビジネス化への転換期

 

中国では、2014年以降、AI領域に人材、資金、政策など注ぎ込まれたため、AI技術が急速に発展してきました。

深層学習などの基礎技術をベースに、音声認識、画像認識、自然言語処理、自動運転など各業界においても、大手企業、ベンチャーなど多くの企業が参画し、AIブームとなりました。

もちろん、2020年もさらに熱気を帯びていくとが思いますが、2019年はその転換点だったのではないかと思います。

というのも、2019年は、起業家も投資家もAIに対して徐々に冷静になってきた年でした。AI技術さえ持っていれば、資金が調達できたり、優遇される時代は終わったのです。

つまり、AIで成果を求められる時代のはじまりです。 AIによってもたらされる成果とは、主な2つのポイントを絞ることができます。 それは、AIの「利用シーン」と「コストパフォーマンス」です。

「利用シーン」とはAI技術を駆使して、対象となる業界、市場をさらに広げることができるか?ということ。それに対して、「高いコストパフォーマンス」とはその市場でAIを活用することにより、サービスのコストを引き下げ、高いパフォーマンスを出すことができるか?ということになります。

「優れたAI技術」を駆使して、「利用シーン」を広げ、「コストパフォーマンス」を劇的に改善することができるAI企業のみが生き残っていくと予測しています。

 

AIチップ:各社が独自のチップを開発- 脳型

 

中国ハイテク産業の中で弱い領域といえば「チップ」です。そんな中、AI市場の高まりによって、大手もベンチャーもチップ開発の領域に力を入れてきています。2019年は、ファーウェイ、アリババ、バイドゥなど大手IT企業各社は、独自のAIチップを開発し、発表しています。

 

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科学誌「ネイチャー(Nature)」は2019年8月に、清華大学「類脳計算研究中心(脳型コンピューター研究センター/Center for Brain Inspired Computing Research)」の施路平(Shi Luping)教授率いる研究チームが開発した脳型コンピューターチップ「天機芯(Tianjic)」に関する論文を巻頭記事として紹介しました。

「天機芯」は新型AIチップで、汎用人工知能(AGI)研究における脳型コンピューティングと機械学習を融合したハイブリッド型のAIチップであり、「天機芯」を搭載した自動運転自転車は、リアルタイムで視覚的探査、目標追跡、障害物自動回避、自律的バランス制御、音声制御、自律的意思決定などの機能を実現しています。

 

 

AI基盤:国家レベルのAIプラットフォームへ

 

現在、中国科学技術部の指導のもと、国家レベルで次世代AIプラットフォームの開発が進められています。

そのプロジェクトには2017年から2019年まで、計15社が選ばれ、自動運転、スマートシティ(シティーブレイン)、医療画像などそれぞれの領域においてプラットフォームを建設することになっています。

各社は、担当領域において中国で最も実力のある人工知能技術を持っていると言えます。現在、15社がこのプロジェクトに認定されており、人工知能の技術開発の領域をほぼカバーするようになっています。

 

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上記のように、企業と連携して、AIプラットフォームをインフラとして構築するほか、AI人材の育成にも注力しています。

2019年3月、中国教育部(省)が発表した2018年度一般大学専攻登録・審査認可結果によると、浙江大学を含む35校がAI専攻の新設が認められました。上海交通大学、同済大学、浙江大学など名門校のほか、江蘇科技大学、安徽工程大学、長春師範大学など一般レベルの大学も許可されています。

 

AI投資:「熱狂」から「冷静」へと移行

 

この数年、AIは注目を集め、投資においても熱狂的という表現がぴったりなほど盛んに行われてきました。

しかし、昨年から徐々に貿易摩擦の影響もあり、AI投資については投資家も冷静になってきています。そして、AI技術重視から「AIを活用したビジネス」へと変わってきています。

 

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AI濫用の危機:AIを活用したフェイクニュース

 

AIが急速に発展していく中で、AI技術の濫用を危惧する声をよく耳にしています。特に、法律がなかなかAI技術の発展に追いつかないことも現実です。

中国では、管理規定などの形で速やかに対応するケースがよくあります。例えば、ディープフェイクのようなAI技術に対して、2019年11月18日に、国家インターネット情報弁公室・文化と観光部・国家放送テレビ総局が「ネット映像・音声情報サービス管理規定」を策定しました。

規定では、「深層学習、バーチャル・リアリティなどの技術とアプリケーションでフェイクニュースを制作・配布・伝播してはいけない」としています。

この「AIを活用したフェイクニュースを厳罰化」は2020年1月1日から施行されています。AIを使って映像や音声を制作した際、その旨を明記することを義務付けています。仮に事実を隠ぺいした場合、刑事処罰の対象になる可能性があります。

激変する世界情勢の中で、中国のAI産業は今後どうなるか、まだ見極めることができませんが、日進月歩でその技術は進化していくでしょう。と同時にビジネスへの応用、実用化、商用化についても引き続き課題で有り続けることを意味しています。 今後も、引き続き注視していきたいと思います。

 

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筆者プロフィール

唐 徳権 とう とくけん

唐 徳権 (とう とくけん)

イーパオディング株式会社代表取締役社長
北京璞華ロボット情報技術有限公司Founder &CEO

中国におけるロボット及び人工知能事業、日中間のビジネスコンサルティングに従事。ロボットや人工知能についての情報発信も積極的に行っている。日経クロストレンドでは「中国デジタル革命の深層」という連載を執筆中。