山谷剛史の中国ITニュースピックアップ:2020年1月~3月新型肺炎期間の中国ネット企業の動きまとめ

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 中国を拠点とするITライター・山谷剛史さんが、中国国内で話題になったITニュースをピックアップする連載企画です。
今回は、2019年末より報じられ2020年1月~3月に中国で猛威を奮った新型コロナウイルスに対するインターネット企業の新しいサービスについてまとめました。


春節前となる1月23日、百度(バイドゥ)は地図サービス「百度地図」で、特設マップを追加した。
当初は大まかな感染地や人が集まる場所、診療できる医療機関の表示をしていた。2月10日には大規模な更新があり、細かな団地、マンション、マーケットでの感染者地図や、検疫チェックポイントが表示されるようになった。ライバルとなるアリババ傘下の高徳地図は、2月9日に特設マップを追加し、2月24日に百度同等の感染者マップ機能が追加された。

 

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1月24日、テンセントの騰訊教育は、10余りの教育企業や武漢、湖北省各地の教育部門と提携した「不停学聯盟」を成立。
学生の勉強を継続させることを目的とし、学生にオンライン教育コンテンツを提供した。1月31日までに提携教育企業は100社余りに増え、テンセントの教育サービス「企鵝輔導」は、湖北省の学生に向けて累計4万課程の冬休み用宿題を提供したという。2月1日には湖北省から中国全土に対象を広げた。

 

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春節初日となる1月25日、バイトダンスは、アプリ「抖音(TikTok中国版)」「西瓜視頻」「今日頭条」「抖音火山版」とスマートテレビ向けアプリ「鮮時光」で春節向けに用意された新作映画「Lost In Russia」を無料公開。
3日間で再生数は6億を超えた。ほか、映画「瘋狂的外星人(Crazy Alien)」「唐人街探案(Detective Chinatown)」など13本の無料配信を開始した。3月20日には2月下旬に映画館で上映予定だった「THE WINNERS」を同アプリで無料公開した。

 

1月25日、テンセントは新型コロナウイルス関係のデマ検証特設ページを開設した。
毎日の関連話題のトピックが表示され、「真実」「チェック中」「デマ」「ニセ科学」などに分類される。3月になっても毎日のように新しい話題にいずれかのタグがふられている。 

 

1月26日、美団(Meituan)のデリバリーサービス「美団外売」は、生鮮や食のデリバリーに「無接触配送」のオプションを追加。
これまでは配送員が顧客に直に渡していたが、これは直接手渡ししないというオプションだ。後日の美団の調査結果によると、3分の2の利用者がこの無接触配送のオプションを利用したという。美団自体は、美団外売を安心して使ってもらおうと、「レストランの消毒」「調理師、テイクアウト担当者、配達員それぞれに対して毎日体温測定」「担当調理師、テイクアウト担当者、配達員の体温を記した安心証明書をデリバリー時に添付」「配達員のマスク着用」「デリバリー二輪車に設置された箱の消毒」を行い、食の安全をアピールした。

 

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1月26日、テンセントは微信支付(WeChatPay)に「医療健康」サービスを追加した。
これはアプリ利用者のいる地域の感染状況や医療情報が調べられる「騰訊健康」や、医療知識に関する記事や動画やライブ動画が見られる「騰訊医典」のミニプログラムに簡単にたどり着けるというもの。2月5日にはネットユーザーが新型肺炎にかかっているかAIによる対話で対応する「新冠肺炎症状AI補助自査工具」を発表。市民が簡易受信で新型肺炎かどうかわかるとともに、医者の診察数を減らすことを目的としたものだ。

 

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1月28日、バイトダンスは、ビデオ会議を含めたオフィススイート「飛書(Lark)」について、ビジネス向けパッケージを5月1日まで無料にすると発表。
また湖北省の病院や学校や公益組織に対し、3年間無料で提供すると発表した。2月10日には、同社は100人以下の中小企業に対し、同ビジネス向けパッケージの無料化を3年間に変更すると発表。その2週間後となる24日には無料化した。

 

1月29日、アリババは、1000万企業を対象に「釘釘(DingTalk)」のビデオ会議も含めたオフィススイートを無料化を発表。教育現場や企業に向けてアピールを行った。

 

2月3日、アリババのスーパー「盒馬鮮生」とレストランチェーン「雲海肴」や「青年餐庁」でシェアスタッフ(共享員工)の提携をした。
これにより臨時スタッフの所得を安定化させるという。アリババのこのニュースをトリガーに、各地でアリババ同様のシェアスタッフに関する報道が増え、一時的に異業種の仕事に就くスタッフについて報じられた。シェアスタッフ自体は初めての試みではなく、2017年に成立した雲南省の衆都科技シェアスタッフのアプリを出している。

 

2月6日、アリババは中国国内の医療物資不足に対して、世界中から医療物資を調達するためのプラットフォーム「防疫直彩全球導源平台」を発表した。
発表から24時間で180の国家と地区から300万人が参加したという。

 

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2月6日、アリババは浙江省に続き、湖北省、天津市など中国各地の省・自治区・市政府と提携し、各地で「デジタル防疫システム」を構築した。
これは同社のスマートシティを感染防止に向けて機能を特化したもので、リアルタイムで現状の感染状況を多角的に見ることができる。

 

2月10日、大手ECサイトのPing多多が、農村の救済を目的とした農村から直接野菜を購入できる特設ページを開設。
その後も同様の目的で、中国各地域の農村担当者と協力し、各地の農作物をライブコマースで販売した。

 

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2月11日、アリババが「阿里健康碼(アリババ健康コード)」について同社企業城下町の杭州で運用を開始した。
これは同社SNSの釘釘から健康状態を申告し、深刻に基づいて、緑色、黄色、赤色のQRコードが表示されるというもの。色に応じて通行の自由や、隔離や体調報告が義務付けられる。この後2月18日より阿里健康碼は中国全土に運用範囲を拡大した。

 

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2月23日、アリババは「雲春遊」と称し、ライブストリーミングプラットフォーム「淘宝直播(タオバオライブ)」上で中国の中国国家博物館など8館の博物館の動画を配信した。
外出できない人々の旅行ニーズを背景に1000万人近くが視聴したという。また3月1日からは、雲春遊の第2弾として、同じく淘宝直播でチベット自治区の区都ラサのポタラ宮のライブ動画を配信し、100万人近くが視聴した。アリババが雲春遊を提供した背景には、昨年末に発表した「1+8文化旅行デジタル経済体(阿里巴巴1+8文旅数字経済体)」がある。アリババは小売を新零售で変えるように、アリババのグループ会社で、旅行業界のデジタル化と効率化を進めようというもの。

 

2月24日、テンセントの情報系サービス「騰訊看点」のアプリやミニプログラムから、中国107都市でのマスク予約購入情報が見られる機能を追加した。

 

3月8日、アリババの阿里健康が、イタリアや日本などの海外在住中国人向けのオンライン医療相談窓口を開設した。
支付宝(Alipay)から「科学防疫」と検索し、「守護海外僑胞」をタップすることで中国の担当医師と無料相談ができる。

 

3月17日より、中国で電子保険証「医保電子凭証」を中国全土でスタート。ウィーチャット、アリペイ、国家医保アプリから利用可能に。
物理的なカードに代わるもので、病院や薬局での支払いなども電子化され、病院での手続き時間が短縮化されるという。

 

 
まとめ

新型コロナウイルスが大きな問題となるや、まず最初の1月末の段階で

・ポータルサイトや地図サービスで特設ページを開設
・コンテンツ・教育サービス・企業サービスの暫定的な無料化
・デリバリーでの非接触対応

が行われた。また水面下ではECサイトでマスクのニセモノや高額な転売を取り締まっていたことが発表でわかっている。既存のサービスを無料化するなど、手間がかからないことをまず行った。

2月以降になると、アリババとテンセントが新サービスをリリースしていく。機能限定的なスマートシティのシステムや、健康コードなど、官民の強い連携が必要なものだ。官民連携では百度地図など地図アプリも新型肺炎対応で新機能を追加している。

 

筆者プロフィール

 

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山谷 剛史(やまや たけし)

1976年東京生まれ。東京池袋近辺、福岡市、中国雲南省昆明育ち。フリーランスライター。
2002年より一貫して中国やアジア各国のITやトレンドについて執筆。中国IT業界記事、中国流行記事、中国製品レビュー記事を主に執筆。

主な著書に『中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書)』『ゼロからはじめる 海外旅行でスマホ活用 スマートガイド』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち (ソフトバンク新書)』など

公式プロフィール:https://about.me/yamayat
Twitter:https://twitter.com/YamayaT

 

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