
株式会社 OCS
https://www.ocs.co.jp/課題
狭帯域、不安定だった OCS の日中間ネットワーク
OCS は、集荷から配達まで ドア・ツー・ドア の一貫したエクスプレス輸送を展開する ANA グループの国際物流企業だ。世界 78 カ国 160 拠点以上のグローバルネットワークを持ち、書類から大型貨物まで「迅速」「確実」「丁寧」をモットーに世界中に配達している。
そんな OCS では、グローバルの拠点間で利用している物流システムに課題を抱えていたという。同社の情報システムを担当する業務プロセス改革部 部長の下門 深史氏は、特に海外主要拠点の中国と日本の本社を結ぶネットワークの課題解決が急務だったと話す。
「当社は日中間のビジネスが多く、ネットワークを経由して大量のデータをやりとりしています。しかし、日中間を結ぶ専用線はわずか 2Mbps と帯域が狭いうえに不安定で、遅延がしばしば発生していました」(下門氏)
この課題を解決するために、業務プロセス改革部 業務プロセス改革チーム マネジャーの東保 恵美氏が中心となり、日中間ネットワークの改善を目的としたプロジェクトを立ち上げた。
「プロジェクトでは当初、通信事業者が提供する専用線の帯域を増強しようと考えました。しかし、専用線の回線利用料が非常に高額になることが分かり、別の手段を検討することにしました」(東保氏)
下門氏によると、専用線以外にも中国との間には取り組むべき課題があったそうだ。「まず、当社日本、他国拠点と中国拠点とのデータのやりとりを容易化、安定化するための中間システムを構築する必要がありました。そうしたシステムの開発は当社の中国現地法人 OCS 中国が担当していますが、日本からガバナンスを効かせるには中国語によるコミュニケーションが必須です。これらの課題もまとめて解決できる事業者を探していました」(下門氏)
導入の狙い
日中間ネットワークの安定稼働と遅延解消を目指す
OCS が課題解決のために最初に注目したのは、中国国内にある Alibaba Cloud を活用することだった。 アリババは中国国内で抜群の知名度を誇り、中国人の信頼も厚い。サーバーシステムの置き場所として申し分なく、当然のことながら中国語でコミュニケーションがとれる。しかしながら日本の本社がAlibaba Cloudと直接契約しても、最大の懸案事項である日中間ネットワークの課題の解決は難しく、サポートやコストの面でも大きなメリットを感じていなかった。プロジェクト責任者の東保氏を支える立場にある同チーム リーダーの山田 浩信氏は、Express Connect が OCS の課題解決に最適だと直感した。
「Express Connect は、日中間ネットワークの安定稼働と遅延解消を実現できると考えました。さらに中国の Alibaba Cloud 側にゲートウェイを置くことで、グローバルで統一された URL を利用しながら回線品質を向上できるという魅力も感じました」(山田氏)
日中間ネットワークをExpress Connectで接続するとともに、Alibaba Cloud 側にゲートウェイを設置。また、中国の当社拠点が使う共通データフォーマットの中間システムを Alibaba Cloud 上に設置した。
選定理由
中国に強いチーム力、総合力、スピード感が決め手に
選定理由はいくつもあるが、最大の理由はやはり「中国に強い」という点だ。「日中間のネットワークを構築するときも Alibaba Cloud とダイレクトに接続でき、性能が突然低下することはありません。このようなソリューション品質の高さが、選定した大きな理由になっています」(山田氏)
また、プロジェクトを推進するための懸案事項だった中国語の課題も、簡単に解決した。「当社のために中国語でコミュニケーションがとれるエンジニアをアサインしてくれました。クラウドに精通し、OCS 中国に対しても説明できるエンジニアが加わったことで、商習慣が違う日中間のプロジェクトもスムーズに進行しました。こうしたチーム力の高さ、さらには提案の総合力、スピード感が選定の大きな決め手になっています」(東保氏)
OCS では現在、日中間ネットワークを Express Connect で接続し、日本のデータセンターで稼働する基幹系業務システムへの外部からのアクセスは、すべて中国国内の Alibaba Cloud の上海リージョン経由で行う仕組みになっている。
今後の期待
ビジネス拡大の基盤として期待
Express Connect によって広帯域な日中間ネットワークを実現した OCS では、中国はもとよりグローバルのビジネス拡大にとって有効になるものと期待する。「安定した日中間ネットワークが構築できたことで、中国ビジネスの拡大につながるものと期待しています。また、 OCS では新たなグローバルビジネスの拡大を積極的に進めており、そうした物流システムの基盤になるものと位置づけています。お客様から要望の多い正確かつタイムリーな貨物情報の提供なども実現できるようになり、顧客満足度を向上させるという意味でもサポートしてくれると考えています」(下門氏)
中国ビジネスが重要な企業は、OCS のような国際物流企業だけに限らない。例えば、中国に生産拠点を置く製造業、中国の巨大市場を狙って進出する流通・小売業などの多くの企業が、日中間ネットワークに何かしらの課題を感じているであろう。今回、Alibaba Cloud の採用によって課題を解決した OCS の事例は、中国ビジネスを展開する他の企業にとって大いに参考になるに違いない。
