
日本でダンスをメジャーな存在へ押し上げたと言っても過言ではないエイベックス。20年にわたりダンススクールを運営し、育成ノウハウを蓄積してきた。同社は、その“秘伝のノウハウ”と、最新テクノロジーを掛け合わせて生み出したオンラインダンス育成アプリ「Dance COMMUNE」を2019年10月にリリースした。
そこで今回はDance COMMUNEの事業を立ち上げた星野氏にサービスの内容と、システム開発にAlibaba Cloudを導入した背景について聞いた。
お客様プロフィール
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エイベックス・ビジネス・ディベロップメント株式会社
新事業開発グループ スポーツ&エンタテインメントユニット マネージャー星野 拡(ほしの ひろむ)氏
AIでダンスを評価する新しいスキルチェックアプリ「Dance COMMUNE」
御社が開発された「Dance COMMUNE」について教えてください。
星野:Dance COMMUNEは、「次世代のダンス育成システムの構築」を目指して開発した、オンラインダンス育成サービスです。現在は弊社のダンススクール(エイベックス・アーティストアカデミー)に通う生徒が利用しています。

星野:これまでエイベックスが培ってきたダンス育成ノウハウを元に、動画解析技術と独自のデータ分析及びアルゴリズム開発など科学的アプローチを取り入れることで、これまで感覚的にしか評価されて来なかったダンスの定量評価=スコア化を実現したスキルチェックアプリです。
具体的には、自分で撮影したダンス動画を先生に送信してフィードバックを受けられるほか、AIを活用した骨格検出システムによってダンスの動きを捉え分析して、スキルチェックに活かしています。他にも、ダンスの基礎を楽しく学べるトレーニング動画があったり、スクール内のコミュニケーションツールとしての機能もあります。
アプリにはAI技術が活用されているのですね。開発のきっかけは?
星野:スポーツの領域ではデータサイエンスをはじめ、科学的なアプローチで選手育成や指導が行われていますが、ダンスを含むエンタメの世界ではデータの利活用があまり行われていない現状がありました。エンタメの世界にももっと新しいテクノロジーやデータサイエンスを導入すれば、ダンサーの能力向上をはじめ、エンタメ全体のアップデートができるのではないかと思いました。
それからダンススクール生へのヒアリングや、市場調査をはじめてみたところ、「(ダンスを練習しているけれど)自分がうまくなっているのかわからない」という意外なことが分かりました。確かに、ランニングマンのステップを練習して「出来る」ようになっても、1カ月後に「うまくなったか?」と言われると、自分ではわからないところがあります。
そこで気がついたのが、とくにダンスを始めたばかりの生徒たちにとっては、何らか ダンスの上達度を示す指標が必要だということです。あわせて指導者とのコミュニケーションをより円滑に行うためのツールが不足していると考えました。
スコアという基準化された指標があれば、ダンス練習へのモチベーションがさらに向上して、「夢の実現」のためにもっと練習を頑張って貰えるんじゃないかと思いサービス開発を スタートしました。
どのように開発を進めたのでしょうか?
星野:大前提として、弊社はダンススクールの運営を長年やってきて、きちんとしたダンス育成カリキュラムや指導ノウハウを蓄積してきました。その強みをどうやってテクノロジーと掛け合わせて活用するか、我々が持っていないデータサイエンスの領域を強みとするアビームコンサルティングさんに事業構想段階からパートナーとして協力していただき、ダンス解析を推進してきました。
あわせて、ダンス評価の部分については、100人以上のダンス講師や有識者に「どこを見て、どう評価しているか」などをヒアリングしていき、共通点を探しながら、仮説検証を繰り返してロジックを固めていきました。この部分については現時点でも完成しているわけではなく、現在進行形でブラッシュアップを重ねています。
AIを導入している点が大きなポイントだと思います。その点はどのように進められたのでしょうか?

星野:人間の骨格を検出する人工知能エンジン「VisionPose(ビジョンポーズ)」を提供しているネクストシステムさんに参画していただいています。
人の動きをセンシングして、座標点としてデータに落とし込み、それを独自のアルゴリズムに組み込むことで正しい動きかを判断してスコアを出すというシステムを開発しています。ただ、VisionPoseをそのまま使っているわけではなく、ダンスでは重要な踵の位置などもセンシングするようにカスタマイズして、機械学習を行うということを共同で実施しています。
将来の「海外展開」を見据えてAlibaba Cloudの導入を決断

Dance COMMUNEのシステムを構築するうえでAlibaba Cloudの製品をご利用いただいています。そのきっかけを教えてください。
星野:Alibaba Cloudの仮想サーバー「Elastic Compute Service(GPUインスタンス)」 とサーバーレス実行環境「Function Compute」の主に2つを利用しています。
今回の事業で、弊社は初めてAlibaba Cloudを導入しました。採用の理由は明確で、事業構想段階からDance COMMUNEは国内だけでなく、中国をはじめとした海外でも展開しようと考えていたからです。現在、中国ではダンスをはじめとした習い事の市場が非常に伸びていて、その中でも特に我々の領域であるストリートダンスが伸びています。
中国にアプローチしようと考えたときに、当然、中国国内からも利用できるサーバーにするべきなので、日本企業の中国進出を支援しているクララオンラインさんに相談し、その結果、Alibaba Cloudを利用することになりました。初めての利用だったので社内ではわからないことが多く、クララさんにはいろいろとサポートしていただきましたね。
ちょっと突っ込んだ質問をしますが、「中国展開」を想定していなかった場合も、Alibaba Cloudは候補に入っていましたか?
星野:もちろん、候補になっていたと思います。今まで利用していなかったのも、エンジニアチームも含めて「知らなかった」というところが大きいと思います。逆に言うと、他のクラウドは知っている安心感があるから使っている部分もあります。実際に、Alibaba Cloudの製品を利用してみても、他のクラウドと比べて、機能が不足していたり、性能が劣っていたりすることはありません。
Alibaba Cloudは今までに通信障害を起こしたことがないと聞いています。そういったところも含めて、もっと広く知られてくれば、必然的に候補に入ってくると思います。
実際に使ってみての感想もお願いします。
星野:構築や運用に携わっているエンジニアからは、「UIが直感的でわかりやすく、初めてでもそこまで戸惑わず利用ができた」、「OSS上の資源の閲覧のツール(OSS Browser)が提供されていて便利だった」という声が聞かれました。
ダンスはもちろん、今後教育分野にも展開を予定

Dance COMMUNEをリリースして、ユーザーからの反響はいかがでしたか?
星野:リアルで行うダンスレッスンは通常、1人の講師が多数の生徒に対して行うので、生徒1人ひとりに「もっとこうしたほうがいい」とフィードバックをするのは、構造的に難しいところがあるんですね。Dance COMMUNEを活用すれば、レッスン外の時間を有効活用して1人ひとり個別にフィードバックすることができるので、生徒からは「うれしい」という声が多数あがっています。
今後の展開についても教えてください。
星野 当初の想定通り、中国進出の計画を進めています。ほかにも、教育機関への導入や、完全オンラインのみのダンスクラスをつくるなど、さまざまな計画を立てているところです。教育機関への導入は事業構想段階から考えていました。学校によってはダンスを教えたことのない先生が生徒のダンスを評価するケースもあるなど現場では苦労が多いようです。
それは先生と生徒、両方にとってハッピーではない状況です。教育機関にDance COMMUNEを導入してもらえば、その課題を解決するソリューションになるのではないかと考えています。
人の動きをセンサーで取得してデータ化して、解析するという仕組みは、ダンス以外にも応用できそうですね。
星野:その通りですね。既にそこも考えていて、我々がやっているストリートダンスだけでなく、ダンスは健康維持や体力づくりにも役立つので、シニア向けのリズムダンスのカリキュラムにDance COMMUNEを利用するなど、さまざまな展開を考えています。
ありがとうございました。最後に、Alibaba Cloudを紹介する場合のオススメポイントを教えていただけますか。
星野:中国でビジネスを展開しようと考えた場合、中国独自の商環境でクラウドをどのように利用するかは必ずぶつかる課題です。Alibaba Cloudを利用すれば、そこはスムーズに進めることができるので、やはり中国展開を考えている企業にはおすすめしたいですね。
関連リンク
Dance COMMUNE
Alibaba Cloud Function Compute
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