7月4日「第2回 SBクラウドパートナーサミット」を開催しました。
今回のテーマは「機械学習・AI」について。現在は機械学習やAIに対する注目度が高まっているものの、「どのように導入してよいかわからない」「導入したがうまく活用できていない」という声も少なくありません。
そこで本イベントでは、SBクラウドのパートナー6社が登壇し、導入ハードルを下げる方法などを事例とともに紹介しました。本記事では各社の講演内容を紹介します。
オープンストリーム株式会社 Alibaba Cloudの画像検索サービス「Image Search」を使った機械学習レス開発を徹底解説

最初に登壇したのは、SBクラウドと協業して画像検索エンジン「Image Search」を提供している株式会社オープンストリーム SI事業部 戦略技術推進本部 本部長の両角 博之 氏です。
両角氏は一般的な機械学習の進め方に触れ、「一般的にはモデルの実現可能性を検証するアセスメント、モデル作成について検証するPoC、そして目途が立ったところで開発に進み、追加学習を行います。この一連の流れを行うには3~6カ月の期間と専門知識が必要になるため、クラウドベンダーは事業会社がビジネスに集中できるようにと、AIサービスを提供しています」とクラウド事業者が提供しているAIサービスの導入メリットを紹介しました。

Alibaba Cloudの「Image Search」は2018年から提供している画像検索エンジンです。もともとアリババグループのECサービス天猫(Tmall)や淘宝(タオバオ)向けの機能として開発され、ECサイト上での購入率向上につながっています。

両角氏はECサイトにおける「Image Search」の導入効果について「ECサイトではエンドユーザーは欲しいアイテムをすぐに見つけられるようになるため、コンバージョンのアップが期待できます」と語りました。
また、オープンストリームはSBクラウドと協業し小売業界向けに商品検索機能の導入を支援する「Quick&Accurate 画像検索 PoC サービス」を2019年5月より提供しています。

本サービスのパートナーとしてSBクラウドを選んだ理由について、両角氏は「さまざまなクラウドベンダーとも仕事をしてきましたが、SBクラウドが提供する『Alibaba Cloud』はタオバオをはじめ、巨大なECを支える技術があり、そのポテンシャルに期待するところがありました」と語りました。
誰でもわかる・使える物体認識ソリューション 「MoAir」

続いて登壇したのは、NeoX株式会社代表取締役の何 書勉 氏。2016年にNeoXを設立し、AI+AR識別のためのモバイルラベリングプラットフォーム「MoAir」を提供しています。
先ほど紹介した「Image Search」は類似画像を検索するサービスですが、MoAirは物体に潜在している情報を引き出すサービスです。
何氏は昨今問題になっているタピオカの飲み残しゴミを例に挙げ、カップをスマホで写すと飲み残しの状態に合わせて、「可燃ごみ」「不可燃ごみ」と自動識別するデモ映像を公開しました。

さらに、現在進行中のMoAirの活用法として複数の事例を紹介しました。
「たとえば、日本の寿司屋に訪れた外国人がネタについて店員に聞きたいと思っても、英語で説明できるスタッフがいないことがあります。そんなときにMoAirでネタを写せば、情報を簡単に知ることができます。他にも、上海の博物館ではスマホをかざすだけで展示物の情報がわかるようにしているので、従来のようなバーコードやQRコードが不要になっています」(何 氏)

最後に、MoAirのPRポイントとして「オブジェクトを取り込む時間が早く、1つ5秒で終わります。SBクラウドの協力があったおかげで学習時間も早くなり、20個の商品は20分以内で学習させることができます。私たちは毎月千円の利用料で機械学習ができるようにしたいと思っているので、まずはフリー版をダウンロードして使ってみてください」と述べました。
金融機関における機械学習の適用実例と現場担当者でも手軽に使えるAIツール「DAVinCI LABSのご紹介」

Solidware Co., Ltd グローバル事業部長の藤井 正辰 氏は韓国の金融機関を中心に多数導入されている、AI基盤を活用したデータ分析プラットフォーム「DAVinCI LABS(ダヴィンチ・ラボ)」を紹介しました。
冒頭では「現在はデータビッグバンにより直近2年間でデータ量が3.8倍と急増しているため、企業にとってはいかに機械学習を活用して、データを利用するかが重要な時代になっています」と説明。
ただ「データがあったとしてもそのデータを分析して活用できていない企業が多い」と藤井氏は指摘します。一般的に機械学習を活用したデータ分析には、プログラミング、統計、ドメイン知識と3つの高い専門知識が求められますが、3つとも備えている専門家が少ないという企業内での人材不足の課題があるようです。
「『DAVinCI LABS』ではパラメータの調整を不要にして、ボタンをクリックするだけで機械学習を活用したデータ分析や予測業務をできるようにしています。これにより、以前はデータサイエンティストにしかできなかった領域が、企業の現場担当者でもできるようになりました」(藤井氏)

また、DAVinCI LABSの導入事例として、韓国の金融機関での事例が紹介されました。「DAVinCI LABS」を導入し、過去のデータをもとに機械学習を活用した審査手法へと変更したところ、延滞率が1年で約13%から約5%へと大幅な改善につながったようです。「現在は日本の金融機関や企業への導入も増えている」と藤井氏は日本での実績もアピールしました。
データサイエンティスト不要の「Elasticsearch Machine Learning」

Elasticsearch株式会社 パートナーディレクターである富岡 宏氏は、オープンソースをベースとするプロダクト群である「Elastic Stack」について解説。
「データを可視化するkibana、検索・分析・保存するElastic Search、データの収集と加工をするBeatsとLogstashの4つの構造で成り立っています。Elasticの機械学習は異常検知を自動化することで各種の問題を解決する、教師なしの機械学習技術です。」とElasticについて紹介した後、パートナーであるアクロクエストテクノロジー株式会社 シニアコンサルタントの吉岡 洋氏が「Elasticsearch Machine Learning」の特長を説明しました。

吉岡氏はまずデータサイエンティストの役割について「データサイエンティストには、①インフラ構築、②データ分析、③業務分析の3つの役割があります。①はAlibaba Cloud、②はElastia Stackがあるため、これらを使えば事業者は③に集中することができます。だから、データサイエンティストが不要になるんです」と説明。

続いて、Elasticsearch Machine Learningの特長を解説しました。
「Elasticsearchに蓄積した時系列データに対して、教師なし機械学習を用いてモデルを作成し、異常検知を行う機能です。関数を選択するだけで簡単に実施可能で、インフラ変更時のチューニングが不要です。データのトレンドのみから異常を判定するため未知の異常を検知できる可能性があります。できることがシンプルなので、応用の幅が広いところも特長です」(吉岡氏)

NGCでインフラ環境整備の時間短縮!素早く始めるディープラーニング

最後に登壇したのは、エヌビディア合同会社 HPCデベロッパーリレーションズ マネージャーの古家 真之介 氏です。
「ディープラーニングを加速するには、DNN、ビッグデータ、GPUの3つの要因があります。たとえば、猫を猫と認識させるためには大量の猫の画像データが必要になります。それを学習するのは非常に重い計算となるのため、現時点でのベストな解ははエヌビディアのGPUを利用することです」(古家氏)
古家氏は、エヌビディアのデータセンター向けGPUは「Tesla V100」、「Tesla P100」があることを説明した上で、「スパコンランキング上位10位のうち5つにはこれらのGPUが使われています。現在、Alibaba Cloudの東京リージョンではP100のみで、V100はまだ未導入なので、今後導入されることを期待しています!」とAlibaba Cloudへのリクエストも発表し、会場内は大きな笑いに包まれました。

古家氏はGPU対応アプリケーションの総合カタログ「NGC」もあわせて紹介し、「これはPascalやVolta世代のGPUを搭載したPCからサーバ、複数のクラウドサービスなど、あらゆる環境からアクセスすることが可能です。エヌビディア本社のエンジニアと同じものを、しかも無料で誰でも使うことができるので、ぜひ一度試してみてください」と語りました。

また、会場内では参加者限定で「NVIDIA on Alibaba Cloud クイックスタートガイド」というマニュアルが配布されました。
懇親会ではライトニングトークが行われました

講演終了後には懇親会が開催されました。懇親会ではSBクラウドパートナーの6社によるライトニングトークも行われ、各社がAlibaba Cloudを活用したソリューションを発表しました。

株式会社スペースリー 代表取締役 森田 博和 氏は「2000社以上に選ばれる どこでもかんたんVR スペースリーの活用事例」を紹介しました。

株式会社ビヨンド 東京支社長 佐藤 大輔氏は多言語対応の店舗向け予約システム「EDISONE(エジソン)」について紹介しました。

株式会社アトムシステム 吉原 千恵氏は「中国倉庫のムリ・ムダ・ムラを解決!WMSパッケージのご紹介」を紹介しました。

IT&BASIC Japan株式会社 代表取締役 姜 模煕(カン・モヒ)氏 は韓国で導入実績No.1のライブQ&Aサービス「SYMFLOW」を紹介しました。

DSInnovation株式会社 代表取締役 野尻 梢氏はインバウンド旅客と事業者をつなぐ「JLINKER!」について紹介しました。
今回のイベントでは合計12社のパートナーが登壇する大型イベントとなり、参加いただいた方からも、大変好評をいただきました。今後もイベントは継続的に開催して参りますのでご期待ください。
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